AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

優しさと力

ウルトラマンコスモス

第28話「強さと力」

感想レビュー

 

 

「怪獣の生き死にの権利を、貴方や、TEAM EYESが握ってるわけですよねェ?...そのことをどれだけ真剣に考えているか、疑問に思うことがあるんですよねェ?あまりに安易に攻撃に移り過ぎてるってことが!?」

出、出た〜、人里に降りてきた熊が射殺された時とかに残酷だとか殺さず逃がせただろとか対岸の火事だと思ってる無責任で安っぽい批判振りかざすエセ愛護人間奴〜...燃やせ(直球) こういう人間に限ってどうせ自分が熊(コスモス世界で言う怪獣)の猛威に晒されて命の危機に陥ったら怯えてチビり散らかしながら「早く攻撃して倒しなさいよォ〜助けてェ〜」とか平気でダブスタかましてくるんでロクでもないですよ本当 踏み潰されかければ良いと思う(暴言)

猛獣を眠らせてから元々のいるべき場所に五体満足で帰してやるのがそりゃ当然ベストだけど、麻酔銃も熊に即効性発揮するわけではないし、打ちどころ悪いと大人しくさせるどころか余計刺激して人的被害を広げかねない、加えて扱える人間も限られるっていうところで、現実においても人間への被害を抑えるために厳しい決断を早期に取ることは間違いでもなんでもないわけで、過剰に手厳しい的外れな批判をどうかなさらないように、というのはここでも訴えかけさせていただきたい。(そもそも熊が人里に降り立ってきたりするのは人間のよる行き過ぎた森林開拓とかによって住処や餌が減った故でもあり詰まるところ人間に因果が巡ってきてるって話なので、そうならないように自然・環境保全の意識を多くの人間が持ち、何をすべきかという正しい知識などをしっかり理解し身近なところからでもそれを実践していくことが必要なわけです ご理解いただけるよう。)

 

↓人里に降りる熊の対処に関する実情や、熊との共存・棲み分けを実現するための予防対策などについてまとめたページを一通りまとめてきました。ご参考になれば。

クマ駆除に「なぜ麻酔銃を使わない?」と言う人へ その理由を説明した漫画が「勉強になる」と話題に(全文表示)|Jタウンネット

ヒグマ特集 麻酔銃 不確実要素多く:北海道新聞 どうしん電子版

クマとの共存を目指して |WWFジャパン

 

と、初っ端から現実の問題にも則したちょっと説教っぽい話になってしまいましたが、こうして現実の獣害問題にも当てはまる無責任な批判とかが出てくる点を描写として落とし込んでる辺り、コスモスという作品が怪獣保護について描く上でそのディテールをかなり深く掘り下げてるのが窺え感心されるところでしたね

 

そんな怪獣保護について「もっと強くならなければ何も守れない」という考えを持ち始め、更なる力を手に入れようと焦るムサシの姿を軸に描いていくストーリーとなった今回。第26話で登場した実体カオスヘッダーのコスモスをも上回る強さを目の当たりにしたことが要因、という接続になっており、イブリースの圧倒的な力の印象が濃かったこともあり展開運びとしては説得力ある形にハマっておりました(どうせならコミカルな第27話を挟まず行っても良かったかなとも思うけど、そうなると展開が地続きすぎて息つく暇が無く、コスモスの苦戦も多くなって当時の視聴感・視聴ペース的にちょっとフラストレーションが溜まったかもしれないので一拍置いて正解かもしれない)

そんな焦りから力を付けることに拘り、従来の優しさを見失ってひたすらに攻めの姿勢に打って出ようとしたり相手を力で強引にねじ伏せようとしたりと荒れるムサシの姿は杉浦さんの目力溢れる演技もあってなかなかに鬼気迫るものがあり、今回のドラマ面の一つの見所でした。道場でのフブキ隊員との練習試合の回想での表情は思わずこっちも気圧されそうな威圧感が感じられるものであり必見。いよいよ話が30話台の大台に入ろうというところまで来ただけに、杉浦さんの表情の作り方などの演技面の成長が序盤と比べてもグッと感じられるようになっていましたね

 

そのムサシの焦燥を肌で感じ取り、心配し気遣っていたのがフブキ隊員とヒウラキャップの両名でしたが、この2人がそれぞれ戦いの中でも相手を気遣うことを忘れないムサシの優しさを弱さでありつつ同時にムサシだからこその強さであると大事に思い尊んでいることが窺えたのは良かったですね。特にフブキ隊員に関しては直接多くを語りこそしないけど、最初は軽んじていたムサシの優しさを今では彼のアイデンティティであり良き部分であると心の奥底で認めている、というこれまでの話の中での交流の積み重ねが静かに感じ取れてグッときたなと。ムサシのライバルにして良き相棒的な存在、ムサシの持つ可能性を見初め導く人物、とそれぞれ異なる関係性ながらもムサシとより濃い向き合い方をしてきた2人がムサシの変化を直に感じ取ったりその本質を突いて諭したりと、この物語の重要な局面でしっかりと関わるのは2人のキャラ性及びムサシとの関係性の良い深め方でした

またヒウラキャップはこのムサシとの関わり以外のところでも、「怪獣の生殺与奪を握る立場であることを理解しているからこそ攻撃という選択を最後まで取らないよう努力する」「しかし同時に怪獣が人の命を脅かす場面も多々あるからこそ、やむを得ない選択を取る覚悟もしている」と怪獣保護を「他の命を守る使命」として広い目で見ているからこそと思われる円熟した考えを見せていて、この点もキャラ性の掘り下げとして実に響いたところでした。「怪獣を守るのはEYESの義務だ!だがな...俺には、お前達を守る責任がある!それでEYESが弱虫だと非難する奴がいるなら言わせとけ!!俺が欲しいのは...強引な強さじゃないッ!!」の台詞はムサシを諌める言葉でありつつも、キャップのEYESのリーダーとしての責任・命を守る者としての責任を強く含んだとても熱い台詞になっていてカッコ良く、今回の話の白眉でした。TEAM EYESの一員としてあらゆる側面において「命を守ること」を頭に置いており、常に全力であらゆる救える命を救おうとする熱さを持ちつつ、その時その時の状況での最善を模索し真に守るべきものを弁える冷静さも持っている、という奥深さが感じられたなぁ 第14話で感情的になるあまりインフラへの影響を軽視する発言をしてしまったり、今回も自分だけならまだしもドイガキ隊員を巻き込んで結果的に彼のことも危険に晒してしまったりと、一つのことに拘りすぎて周りが見えなくなるきらいのある青臭さが抜け切らないムサシのまだ未熟な部分との対比としても効いてるなと

 

そして終盤、カオスヘッダーに侵され暴れる怪獣エリガルと、強大な力を持って怪獣を守らねばならないというムサシの激情を伴い立ち上がるコスモスとの戦闘。

エリガルをカオスヘッダーの呪縛から救い、エリガルから切り離されたカオスヘッダーが変貌したカオスエリガルも撃破、とカオスヘッダーとの戦闘そのものはコスモス達の勝利という決着に終わるものの、その直後、エリガルがカオスヘッダー憑依の影響による衰弱に加えエリガルを救うことに執着し我を忘れたムサシ/コスモスの連撃のダメージという追い討ちを受けて落命その様にEYESの面々やコスモスが衝撃を受けたまま戦闘が締め括られてしまう...と、これまで「慈愛・優しさ」を持って怪獣を救い守ってきたムサシ/コスモスが、カオスヘッダーの強化や怪獣保護の失敗を詰る心ない声といった怪獣保護の前に立ちはだかってくる大きな壁を前にして「それらをねじ伏せる力」を得なければならないという苛烈な感情に駆られてしまった結果、守らねばならなかった怪獣を間接的にとはいえ自身の落ち度のせいで殺め、守れずに終わってしまうという明確な挫折-敗北を味わうこととなる、というショッキングな展開が繰り出される流れは、やはりいつ見ても衝撃の一言。瞳から光を失っていくエリガルを抱くコスモスの姿からは悲痛さが滲み出ておりとても辛い...

また今回の戦闘、イントロと共にコスモスがコロナモードへと変身する画を経てTouch the fireがほぼフル尺でBGMとして流れる中で、vsエリガル→vsカオスエリガルの2段構成のバトルが濃密に描かれる、と構図としてはこれまでのバトルの中でも屈指の熱い演出(Touch the fireが2番→1番の順で流れるという変則構成なのがまた洒落の効いた乙なポイント)になっていたのですが、その分、その決着の直後に視聴者や登場人物達が勝利の余韻を味わんとしたところで前述したエリガルの落命が描かれる、という大きな落差が生まれる構成になっていて、ムサシ/コスモスの精神的な意味での敗北という構図がより強調されるようになっていたのがまた凶悪なところでしたね...エリガルに力強い連撃を叩き込むコロナモードのカットを一つ一つ強調して描く、という普段ならとてもカッコいい演出の合間合間に、前半パートで描写された鬼気迫る表情で戦うムサシのカットを挿入することで、ムサシが思いやりの心を持たないまま戦っているという不安感を勘のいい視聴者にほんのりと感じさせてくる絶妙な塩梅の絵作りも巧妙。カオスヘッダーが切り離されてる最中のエリガルが直立不動のまま痙攣して震えてる画も今こうして見てみると凄く痛々しくてぞわっとする..

ラストは夕暮れの中、「力が優しさを消してしまう」という事実と、それに気付けず力に拘った故にエリガルを死なせてしまった自身の不甲斐なさへの後悔を滲ませるようにムサシが慟哭し叫ぶというカットで締め。ルナモード・コロナモードというモードチェンジの概念でもってコスモスにおいても象徴されている「優しさ・力」という対極とも言える事象は、何かを守り救うことにおいて背反してしまうのか?どちらかを取ろうとすればどちらかが潰え、そして救えないものが生まれてしまうのか?というかなり非情な投げかけをここで作劇を持ってぶつけてきた辺り、物語という折り返しにおいてコスモスという作品が内包する諸テーマを一つ一つ改めてじっくりと掘り下げようという感じがありとても響きますね

その答えが出るのは、まだもう少し先...

 

以上、コスモス28話でした。要素怪獣保護という使命の中で生じ得る「怪獣を救えない」という挫折をムサシが遂に味わうこととなる、という大きなターニングポイントと言える展開の中で、優しさと力という対となる事象の意義を取り上げ「本当の強さとは何か?」を投げかけてくる、そんな複雑且つ奥深い作劇が特徴の回でした。重苦しい雰囲気やシビアな描写が目立つ一方、ヒウラキャップの「命を守る者」としての責任も強調するなど、キャラクターをグッと深めてくる描写も特徴で実に見応えがありました。大きな壁に直面したムサシの運命や如何に...

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた