AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

心の絆

ウルトラマンコスモス

第42話「ともだち」

感想レビュー

 

 

今回のエピソードは、田舎に越してきた直後で友人を作れず1人突っ張る中学生の少年・俊司が経験する遥か遠くの星の少年・ソルとのかけがえのない一時の不思議な交流を描くジュブナイルストーリー。EYESの面々周りの描写は割と控えめにして、俊司という1人の思春期の少年を取り巻く人間模様をしっとりとした空気感で描く作劇が目を惹く回でした。

しかしEYESの描写がやや控えめだった分、予告で再登場が大きく打ち出されてたテックブースターの出番が少なかったのはちょいと残念だったかな せめてカオスデルゴラン相手で活躍させたげてぇ

 

今回の話はなんと言っても俊司の内面の細やかな描写が見所で、新しい環境に馴染めず同級生達が話しかけてきてくれても「みんなガキっぽくて面白くないから友達作る気になれない」「前の学校の友達ともテレビ通話で話せるし問題ない」と強がってしまいなかなか輪の中に加われない様子を見せる一方、その実同級生の女の子にロボットコンテスト入賞のことを褒められると満更でもなさそうにする辺りに周囲と関わりを持つことを一切合切嫌と思ってはいない一面も窺わせるなど、心の底では身近な人との触れ合いを求めているものの環境の変化について行けず素直になれない、不安さとませた態度の同居した思春期の中学生ならではの複雑な内面が繊細に描かれる様はいつものコスモスとは一味違う人間ドラマの風味があって見応えがありましたね。

そんな俊司が、友人同然だったデルゴランがカオスヘッダーによって暴走させられたことで父を喪い一人ぼっちになってしまったソルに対しては「自分が友達になる!」と真っ直ぐに言ってあげるところは個人的にお気に入りのシーン。「見知らぬ土地で独り」というところでシンパシーを感じるものがあったか、若しくは似たような立場でもソルの方がもっと寂しくて辛いだろうというのを感じてか、なんにせよ見知らぬ土地で1人突っ張っていた俊司が他者にスッと歩み寄るのはグッときました

 

俊司と交流を結んだ異星の少年・ソルと、彼と深い関わりのある怪獣・デルゴランも、今回の話において欠かせないファクターとして良い存在感を発揮していました。父を喪ってなお「デルゴランを倒してもお父さんは戻ってこない」「デルゴランを救ってあげればお父さんもきっと喜ぶ」と言えるソルの優しさは見ていて沁みるよねぇ 立派な少年だよ...それでもたった1人で孤独にいなければならない時間がずっと続いていれば心が弱っていっていたかもしれないし、そう思うと俊司と出会えたのはほんと良い巡り合わせしたよな...

そのデルゴランも最後にはコスモスに無事救ってもらえて、とても優しいオチで良かったなぁ デルゴラン、つぶらな瞳にむくむくした体が可愛らしいムササビ的なビジュアルの怪獣だけど、カオスデルゴランになると耳が逆立ってコウモリみたいな趣にがらっと様変わりし、五つ目の分かりやすく異形な顔つきも相まって一気に「魔獣」的な雰囲気を帯びるのがデザインの変化の付け方として秀逸で好きなのよね 大きく変化してるのほぼ顔だけなのにこうしてがらっと印象変わるの、カオス怪獣のデザインのセンスを感じるところやね

 

事態が収束した後、じわじわと繋がらなくなってゆく交信の中で俊司とソルは惜しむように最後の会話を交わし、俊司は「いつかソルのいる遥か遠くの星へ行けるロケットを作る」と、ソルもそれを受け「いつまでも待っている」と、共に約束を交わし合う。こうして俊司は遥か遠くで待つ友の下へ行く夢を叶えるため、そしてソルとの交流で感じた友情を今一度身近な仲間達とも結ぶため、かつて自身を誘ってくれた科学部の生徒達の下へ一歩歩み寄るのだった、というところで締め。途切れそうな通信の中で必死に想いを伝え合うこの終盤の俊司とソルのシーンは2人の感情の出方が強く胸を打つ絵作りになっていて、観ているこっちも思わず目頭が熱くなり涙が滲みましたね...やっぱ最近の自分、歳とったからかこういうのに涙腺あっという間に緩くなっちゃうなぁ...

ここでこの別れをただ惜しむだけでなく、俊司が「今の科学では叶わないソルとの対面/再会をいつかきっと自分が果たしてみせる」と誓うことで希望を繋ぐ流れは、コスモスならではって感じで凄く良いですよねぇ。イゴマスをいつか直してみせると前向きに決意する第4話も、ヤマワラワも一緒にいられる場所を作ると誓う第36話も、不思議な出会いで得た友人とまた会える/一緒にいられるようにするために前を向く少年少女のストーリーというところで同じ感じの結末だったけど、コスモス世界の子供達は強く優しい良い子供達だよ...生まれた国や種族も越えて友達を作ることや、夢を叶えるために進み続けることの美しさをTVの前の子供達にも優しく伝える良いストーリーよね

そしてラストの俊司、テレビ通話があれば前の友人達とも顔を合わせて会えるからとすぐ近くの仲間達に素直に歩み寄れなかった彼が、液晶越しにしか会えない遥かなる友人とのいつまた会えるか分からない別れを経験したことで、すぐ近くで直接触れ合い結ぶことのできる友情の尊さに気付き一歩踏み出すという成長がこれまた等身大の少年の繊細な気付きと成長の描写として凄く染み入りましたね。画面越しのずっとずっと遠くの友人との絆が気付かせてくれた、すぐ身近で共に手を取り合うことのできる者達との繋がりの温かさ、というところで凄く良い描写でしたね...

手を取り合うことのできた俊司の未来が良きものであることを願って。

 

と、凄く沁みるテイストで締めた今回のエピソードのEDから、新ED曲「心の絆」がお披露目となりました。今までの「君にできるなにか」のしっとりとしたメロディとまた違って、より明るく響く曲調を多く取り込んだ希望溢れる非常に良い一曲ですが、「そう 明日は...」から始まり、「もうこれから ずっと 忘れないでいて」で終わる1番の歌詞が、奇しくも今回の俊司の内面やソルとの友情をほぼそのまま象徴的に表現するかのようなものになっているのが最高に粋で好き。(歌詞全文は流石に載せらんないんで下にリンクを貼っておきます。どうかじっくり読み取って欲しいです)本来は前回のエピソードのEDから使われる予定だったのが1話繰り下がった形になるわけだけど、その結果こんな歌詞の内容にマッチするエピソードがお披露目回に当たるなんて素晴らしいすぎる巡り合わせですなぁ。「君にできるなにか」も前回のED映像とのマッチが非常に良かったので繰り下げ采配はナイスと言うほかない

今回の話の余韻を美しく昇華させてくれる、良い演出になりました。

Project D.M.M. 心の絆 歌詞 - 歌ネット

 

 

以上、コスモス42話でした。遥か遠くの友人との絆を通じ、夢や友情に真っ直ぐ向き合うようになっていく少年の成長を描き出す温かさが沁み入る良いジュブナイルストーリー仕立てのエピソードでしたね。ネットを通じて遠くの世界の人々とも画面を通じて深く繋がれる素晴らしさや、それがなんの気無いふとした拍子に途切れてしまった時に生じる「それが決していつまでも当たり前とは限らない」という切なさや儚さ、そしてそのことから感じ取ることのできる「一歩歩み寄れば絆を結ぶことのできる者達が自分のすぐ身近にも沢山いること」や「画面越しに通じ合ってる者達との繋がりもかけがえのないものとして大事にすること」の大切さを描いた話として、画面を通していつでも友人や趣味の通じ合う仲間と会うことができるネットの素晴らしさがより光る今の時代だからこそ、凄く響くもののある話だったなと感じました。

 

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた