AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

苦言

ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA

第19話「救世主の資格」

感想レビュー

 

 

前回からの地続きで、キリエル人の暗躍を中心とした怒涛の展開を描いた今回...でしたが、初っ端にハッキリ言わせていただくと今回の話は正直かなり微妙だった、というのが率直な感想。何に主軸を置いて描きたいのか、話全体に散りばめた各種の要素を如何に昇華させたかったのか、などがどれも中途半端な形に終わったエピソードだったな...と

 

本エピソードは放送の前々から「ティガに登場したキリエロイドがトリガーに登場!」という部分を大きく取り上げており、ティガをベースとした本作においてそこを強調した上でキリエルというキャラを扱うことに対しては、今までのエピソードにおける怪獣の扱い等から不安も大きかった一方、作品のテーマ性の昇華をはじめとした様々な面から期待していた部分もあったのですが、実際のところ、肝心のキリエルが本編中にロクに姿を現さず登場人物達の言動に影響を与えることがないまま、強引さや取り留めの無さばかりが目立つ展開運びでトリガー本編の本筋ばかりが進行し、キリエルは最後の方についでのように参戦して文字通りに本筋の展開には何の絡みもないまま作業的に倒されて終わり、というなんとも粗末という印象の展開運びになってしまったのが個人的に実に残念でした。厳密に言えば前回の話の展開や今回の話の前半部分の流れはキリエルが関与して起きたものなので全く意味が無かったというわけではないのですが、「それらの展開を起こす起点となった存在」以上の意義が作劇上で創出されておらず、キリエルでそれをやる意味が全く無かったんですよね 「ティガに登場した」の文言を強調した宣伝打った割にその原典で発揮されたキャラ性は殆ど発揮されず、かといってトリガーという一作品単位でも大きく関与しないまま終始、結局形としてキリエロイドのネームバリューだけ良いように使った感じの、客寄せパンダ的な登場になったのがなんとも

 

これでトリガー本編の進行の方が劇的に描かれたならまだ百歩譲って良きポイントがあったと評価もできるのですが、やったのはカルミラのトリガーに対する情愛およびケンゴへの憎悪の掘り下げ、ユナの自身の運命に向き合う意志やシズマ会長のユナへの想いの強調、といったこれまでのエピソードでも十分感じ取れた/既にしっかりと描かれたようなことばかりだったのでこちらも特に旨味はなかったという締まらなさがうーんという感じ。カルミラの内面の掘り下げは終盤のドラマを描くにあたっての布石と思われるのでまぁ重要とも言えるけど、ユナの自身の運命に対する意志・決意に関しては第9話を経てのギャラファイ客演回でユナが気持ちを固め区切りがついたと自分の中では思っていたし、ここでまたユナが自分の運命に対し葛藤する流れやそこから立ち上がる流れを描くのは流石にくどく感じたんですよねぇ(シズマ会長の想いについても第9話で一応劇的に示されたポイントだったし、そこまで改めて描く旨味も無く)。なんか後述のティガの流れに繋げるためにわざわざまた強調したのか?なんて邪推も感じられる

またこの一連の描写中での戦闘シーンに関しても、闇の3巨人との戦闘ということで絵面的にさしたる新鮮さもなく、それが尺長めに描かれるのでキリエロイドが登場する時には既に視聴テンションが大きく下がった状態になったのが痛いところでした(勝手に暴走して内輪揉めを始めた結果街に降りてきて暴れる形になったのでトリガー達と戦うことになった、というあまりカッコのつかない流れだったのもなんとも)。最終的な決着も、グリッターの光線で闇の3巨人がひとまとめに吹っ飛ばされて退却、という第12話とモロ被りな絵面になっててこの点でも面白みに欠けており、総じてトリガーサイドに注力した意味が薄すぎる感じになったな...と

 

そしてクライマックスのキリエロイドとの戦闘にて登場したティガとの共闘。これに関しても、「ティガの勇姿を目にし、光をその身の抱いていたネオフロンティアスペースの住人であるシズマ会長が、その光をユナの持つ光を合わせ解き放ったことでティガが降り立った」と理屈自体は納得できたし、「人は皆光になれる」というティガの根幹たるテーマに沿ったもののではあったものの、そこに至るまでのストーリーの流れ的にわざわざ「ティガの登場」というある種のとっておきの切り札(なんなら禁止カード)を切るだけの展開の必然性があまりに薄く、「ティガの降臨」という語り草となっている流れのみに依った粗雑な客演になった感があり、 自分としては全く響くものがありませんでした。ぶっちゃけ言って「キリエロイドが相手だから」というメタ込みのサービス以上の意味がなく、結果としてキリエロイドもティガも良いようにネームバリューだけ使われた感があったというか...

ティガで描いたものが絶対などと言うつもりは勿論ありませんが、圧倒的な脅威が世界を覆う逆境でも多くの人々が諦めず光となった原典の展開に比べると、ユナとシズマ会長だけのミクロな範囲から転じただけの本エピソードの流れは文脈的にも絵面的にも圧倒的に深みで劣っていたと言わざるを得ず、ファンの間で好評のフォーマットを漫然と落とし込んだようにしか見えなかった、という評価にしかならないというのが正直なところ(話数を重ねて描いた原典の流れに比べれば厚みでは劣るだろう、とはそりゃ思うけど、トリガーだって今までの流れでそれなりに積んできたものはあるはずなのでそこを劇的に活かしきれなかったのはどうもなと思ってしまう)

 

vsキリエロイドの戦闘シーンも、原典を思わせる夜のビル街セットでの戦闘という絵面の綺麗さや、トリガーとティガのタイプチェンジラッシュ&Wゼペリオン光線という演出など、映像的には大いに楽しめるものでこそあったけれど、結局のところ“特撮「は」良かった”という評価にしか収まらず気持ちは上がらなかったなぁ...と。ティガベースの本作においてこの絵面を繰り出すこと自体、前述した通りかなりの切り札/禁止カードという印象なので、こんな中途半端な話数で特に意義もなく切ってしまったのはなんとも残念。悪い意味で「『劇場版トリガー』で観たかった構図」という印象

最後もキリエロイドにトドメをさした後はユナとシズマ会長のカットを一つ入れただけですぐにEDに入るので話のまとまりとしても弱かったというか、キツキツの尺のまま畳んだようにしか見えず、なんとも消化不良に終わる形となってしまいました。この2人の描写は曲がりなりにも今回の話で多くフォーカスしてた部分ではあったんだから、そこぐらいはもっと劇的に締めて欲しかったなぁ

 

 

という感じで、トリガー第19話でした。全体通してかなり苦言を呈す形になったので楽しんでた方には申し訳ないけど、「ウルトラマントリガー」という作品の本筋も、キリエル、ティガといった「ウルトラマンティガ」にまつわる要素も、話の流れとして十分に活かせていないという、ちょっと色々と難の多過ぎるエピソードになってしまったなというのが個人的な印象。正直自分としては現在のトリガーのエピソードの中だとワースト。他の方も言ってるけど、前回今回と脚本を担当された根元さんは近年のニュージェネシリーズで割とドラマ面のまとまりが良いエピソードを書かれてる方という印象が強かっただけに、こんな取り止めのない話を書かれたことはちょっと驚きが強く、突発的なオーダーだったりストーリー構成の不備に引っ張られた面がおおきかったんじゃないかな...と邪推 キリエロイドやティガの扱いがほぼほぼ取ってつけたようなものでストーリー上で持て余し気味だったわけだし ティガの登場を大きな加点として喜ぶ声自体は多く見られ、それ自体は個々人の評価として大事にすべきだからあまりとやかくは言わないけれど、自分としてはどうしても承伏し難い回だったし、こういう過去作の特定の要素のネームバリューだけを押し出すようなやり方や、ファンから評価される展開のフォーマットだけをなぞるような作劇ばかりが推されるようになるのだけは受け入れられない、というのが個人的な考えです。まぁあまり色々言ってもしょうがないのでとりあえずこの辺で。お目汚し失礼致しました。

 

というわけで今回はこの辺で 最後まで読んでいただきありがとうございます

次回もよろしくお願いします 気に入っていただけたら記事の拡散等していただけると喜びます!

ではまた