AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

性悪漫画家奇譚

ドラマ 岸辺露伴は動かない

第1話「富豪村」

感想レビュー

 

 

人間の体には今まで生きてきた「全て」が記憶されている!たとえ本人が忘れていても消せない記憶が...
それは、インタビューなどでは決して得られない100%のリアルッ!!

そのリアリティこそが、作品に生命を吹き込むエネルギー、最高のエンターテイメントとなるッ!!
もちろん、この岸辺露伴の才能あってこそ、だがね

 

短期集中連載だッ!!!

 

ニチアサ放送やトリガー配信のお休み、コスモス感想記事執筆の完走が重なったことで奇跡的に執筆スケジュールがガラ空きになってしまった2022年の年始。

休んでもいいけど暇するくらいならなんかサクッと書けるもん集中的に載っけときたいな?と思い、2020年にNHKにて高橋一生さん主演での実写ドラマ化が発表され大きな話題となったドラマ「岸辺露伴は動かない」を、昨年末に新たに放送された3話分を加えた全6話分、ぼちぼちと感想を書いていくことにしました。「短期集中連載」という響きがなんか良いよねみたいなノリでやってるとこあるので、皆様も暇があれば付き合うかくらいの感じでお付き合いいただければ。

 

 

本作の記念すべき第1話は、自分の家に乗り込んできた...もとい、泥棒の「資料」を手に入れるためにわざと誘き出した空き巣(居抜き)の男2人組を前に全く物怖じせず、それどころが一方的にまくし立てて圧倒、終いにはヘブンズ・ドアーで本に変え記憶を堂々と物色、という全開の岸辺露伴節からスタート。こう改めて観てみても、漫画を描くためのリアリティの追求とあらば常軌を逸した行動に出る執念の如き拘り並大抵の危機にはまるで動じない胆力他人の記憶にズケズケと手を突っ込んで覗き見し心の底から楽しむクソったれぶり(褒)、と我々の知る岸辺露伴という男のクセの強すぎるキャラ像を端的に示してきたこのアバンパートは掴みとして実にグッドだったなと感じますね。記事冒頭の台詞も含め、数分の中での露伴先生のキャラ性の集約のさせ方が巧妙で、動かないシリーズおよびジョジョを未履修の視聴者にもその人となりがパッと把握できるようになってるのが流石

何より岸辺露伴というキャラクターが、高橋一生さんの名演によって細部の雰囲気までしっかりと表現されているのもやはり非常に良きところ。イヤミったらしい言い回しや敵となる相手に対しこもる強い語気といった細かな言動露骨に嫌な感情が表に現れ出た表情時折繰り出される荒木飛呂彦作品のキャラらしい大仰な所作など、どれをとってもしっかり原作漫画で見る露伴先生のそれだし、それらの強烈なキャラ性が原作と比べて格落ちすることもなくちゃんと実写という映像の枠組みの中に自然に馴染んでいるという、「漫画/アニメキャラの実写化として理想」とかそういうのを越えた最高のキャラ表現としてまとまっているのが実に素晴らしいんですよねぇ高橋露伴...「オイオイオイオイオイオイ」とか「〜じゃあないッ!!」といった独特なパワー溢れるジョジョのテイストを多分に含んだ言い回しを堂々と演じ上げていたのを見て当時もあっという間に惹き込まれたものです キャスティング発表時点からビジュアルの雰囲気等から期待値は高かったけど、それ以上に大元のキャラへのリスペクトに溢れた堂々とした演技がガチッとハマった感あって、高橋一生さん本当にありがとうございますという感じですよ 僕は敬意を表するッ

また、「他人を『当人の今までの人生の記憶が刻まれた本』に変える」というお馴染み露伴先生の能力「ヘブンズ・ドアー」も、顔が本のページと化してめくれていく部分はCGでインパクト高めに描き、その後はめくれたページが顔面に顔の形に沿うように貼り付いたアナログなビジュアルで表現、というシンプルながらも良い感じに実写映えする演出で、漫画で見た感じそのままに再現されていたのも良かったところ。ページへの文字の書き込みも凄まじくてぱっと見でも思わずグッと引き込まれちゃうし、表現のための凝り様がシンプルに凄い。スタンドという概念を出さず露伴先生に元々備わっていた異能と定義し、スタンドのビジュアルを出さなかったのも無理のない塩梅の実写表現の上でのアレンジとしてグッド 加えて、泉くんの本はポップな女性雑誌じみたレイアウトに、一究の本は古めかしい感じに、とヘブンズ・ドアーにかかった者の人柄・性質によって本のページの雰囲気が異なることがある、というアレンジも巧かったなと。「人間の精神の形」みたいなテイストはスタンドという概念を筆頭にジョジョの一つの肝みたいなところなので、そこへのリスペクトを感じるナイスな演出でした

 

そんな露伴先生の顔見せから始まり、ストーリーは編集者・泉京香の登場、そして彼女が持ってきた富豪達が集う山奥の別荘地帯への取材決行、という流れで進行。

2年連続の放送の中で既にさんざっぱら言われてることではあるけど、原作の「富豪村」エピソードでの一ゲストキャラに過ぎなかった泉くんをより濃いキャラ付けによって露伴先生の相棒且つある種の狂言回し的ポジションのキャラとして昇華させた采配は思い切ってるながらもかなり秀逸だったよなぁと。実際、原作の時点からあったマイペースな性格をより膨らませることで、イヤミったらしく気難しい露伴先生にも圧されることなくやり取りできる人間として、露伴先生とのコミカルなやり取りを見せたり、ストーリー進行のきっかけを作ったりと、話に緩急を付ける良きレギュラーキャラとして今回に限らずこの先のエピソードでも存在感を発揮しているので、ドラマ版ならではの魅力の一つだなぁと感じますね。他人の記憶のズケズケ踏み込む露伴先生のテリトリーへとマイペースにもズケズケ乗り込んできたり、分かりやすく言い放たれた露伴先生の嫌味を嫌味とも気付いてない感じでにこやかに受け流したりと、この凸凹な対等具合が見てて凄く軽快で面白いんだよな...w 自分の嫌味が通じなかったりといった泉くんのマイペースさに振り回されて不快感が露骨に顔に出る露伴先生の表情や仕草も凄く絶妙で好き。w そしてそれに対し、その時その時は文句を言いつつも時間が過ぎるとあっけらかんとしてまたやって来るというそれをも上回る泉くんのマイペースさの強調がまた(

 

後半では露伴先生と泉くんがマナーが絶対となる件の富豪の村へ。この辺りも、細かな所作一つ一つにハラハラする緊張感から無作法一つで次々に何かを失っていく異様な恐怖へと空気が転じていく、という感じで怪奇性が徐々に高くなっていく原作の雰囲気をしっかり掴んだ作劇が上々の再現度で良きでありました。その一方で、原作では抵触していた「上座に座る」のマナー違反がドラマ版ではクリアする運びとなっていたり、「両手掴みで食べるのが正しい」として原作に登場したとうもろこしが違反の代償として露伴先生の右腕が動かなくなった所で登場したりと原作の流れを微妙に改変した展開にもなっており、原作既読者からしてもどういう運びになるのか初見だと読めない部分があるスリリングさが創出されていたのも上手かった(そもそも「上座への着席」が無くなった分、露伴先生が違反の代償として右腕を動かなくさせられ、とうもろこしの場面で追い詰められる運びとなってるので、総じて話の持って行き方が絶妙なんですよね)。

この富豪の村でのスリリングな展開を牽引する一要因であった一究も実に良い存在感でありました。流石に原作の小さな子供そのままみたいなビジュアルとは少々異なったキャラにはなっていたものの、明らかに普通の人間とは違う異質なビジュアルや不敵な佇まいなど空気感としては申し分無しの表現度で満足感は高かった。演じてるのは柴崎楓雅くんという子役の子で、後から調べたらドラマ「テセウスの船」でも非常に重要なキャラを演じてた子だったのであの堂々とした高い演技力も納得であった

 

そしてクライマックス。露伴先生が一究を本にした際に「畳の縁を踏む」と書いたことで一究がマナー違反を誘発され逆転するという展開自体は原作通りしっかり踏襲されておりましたが、本作はそこに更に「マナー違反をしてしまった者への気遣いもまたマナー」という教訓を加え、「マナーに寛容なし」の意を拡大し驕った一究を精神的にも下すところまで描きカタルシスとしてきたのがとても気持ち良かったですね。

原作「富豪村」掲載は2012年なのですが、それからおよそ10年近く経った現在では事実無根のマナーをでっち上げてそれをなじるエセマナー講師やら相手にマナーのことでマウントを取って調子付く嫌な人間やらが増えて「マナー」というものへの捉え方も少なからず変容してきている面もあると思われるので、そこにおいてその手の「マナー違反への寛容さを無くし、驕り攻撃的になる人間」へのカウンターを新たなメッセージ性として自然に入れ込んできたのは、時代の変化への追従と再構成のおける新たな面白さの創出として巧いところであったし、本エピソードの白眉だったなと。上記のとうもろこしをマナーの件も、一見露伴先生のピンチなようでいて、実際は片手が動かないので物理的に正しいマナーを実行不可能な露伴先生にわざわざそれを押し付けマナー違反を指摘するつもりだった一究の方に「非」があったのだというところに繋がるようになっていたのが実に爽快。淡々とマナー違反を指摘することに徹していればまだ良かったろうに、いつしかマナー違反の指摘で相手の上に立つことを無意識の内に楽しみ出してた節があったのが運のツキだったね一究...

「マナーの本質とは『相手を不快にさせないこと』、『思いやる気持ち』にあるんだ 君にそれがあったとは言えないなァ〜?」「最大のマナー違反それはッ!...『マナー違反をその場で指摘すること』だ」の台詞回しのぐうの音も出ないパワー最高だぜ

そういえば村にやって来る前の露伴先生が泉くんに「その気になればロイヤルファミリーの前にだって出られる」って啖呵を切ってたけど、これってこのマナー違反をなじる者へのカウンター展開の導入として露伴先生がイギリス王室の話を語る流れへの一種の伏線だったのかな、などと

 

またこのクライマックスの一連の展開、こてんぱんにされて感情剥き出しで泣く一究をめちゃくちゃイヤミったらしい笑顔で見下し嬉しそうに笑う露伴先生が最高に露伴先生だったのも凄く良かった。w これですよ、この大人気なさこそが「いいや最高の気分だね ガキ負かすのはね...カッハッハッハーッ」とか気持ち良さそうに言ってのける我々の知る岸辺露伴ですよ() 感情的になって一究が畳の縁を踏んだのを見て「あっ(踏んでるぞ)www」って小馬鹿にした感じで指摘するあの意地の悪さが岸辺露伴よ... あの邪悪さと純粋な喜びが同居したクソッタレな笑顔を100点のクオリティでお出ししてきた高橋一生さん改めてサイコーですよほんま

今後のエピソードでも概ね共通してる点ではあるけど、ドラマ版の露伴先生ってジョジョ本編に登場した時みたいな「常軌を逸した好奇心とそれを満たすための探求行動」とか「相手を完膚なきまでに打ちのめしてそれを楽しむ」みたいなぶっ飛んだ一面が強調されてる傾向があるんだけど、本エピソードでも上記の一究への態度をはじめ、大人しく帰る道もあると示した上で再トライするか否かを問うてきた一究にだが断るを繰り出し挑む反骨の意志を見せたりと、かなりその部分が押し出されていたのが良いよね(原作だと泉くんを助けるよう頼むも「マナーに寛容無し」と一究が切り捨てたことで挑まざるを得なくなった流れだったけど、 そこを自分から飛び込んでいく形にしたの露伴先生のイヤミったらしさの強調としてグッドね)。それが清々しいクソッタレっぷりとしてだけでなく、視聴者の感情ともリンクする「スカッとするぜ」感に繋げられてるの構成として素晴らしかったね

 

 

以上、ドラマ岸辺露伴は動かない第1話でした。改めて観ても、初っ端から脚本、監督、演者などなど全ての要素がキャラの表現とか作品の空気感の再現を抜群のクオリティで織り成してるのが素晴らしいし、その上で実写ならではのアレンジや独自の表現もより作品・ストーリーを引き立てるものとして効果的に働いているの、人気作品の実写化として満点だなとなりますね。初回からこれだけグッッッと引き込んでくるの文句無しですわ

元よりかなりお気に入りだったけど、こうして面白いポイントとかまとめると更に没入しちゃいますね 残りのエピソードもどうぞよろしく

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた

 

 

くしゃがら

くしゃがらくしゃがら...
くしゃがらくしゃがらくしゃがらくしゃがら...
くしゃがらァァァ〜ッ!!!