AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

deus ex machina

機界戦隊ゼンカイジャー

第48カイ!

「天網恢々、王朝崩壊!」

感想レビュー

 

 

美都子博士の満を辞してのカラフルへの帰還、感動的なシーンの筈なんだがそこで肝心の美都子博士が何も言わずに板前の格好して出てくるのが流石のゼンカイクオリティ() どこトピアにいたのか何も言わなくても格好で分かっちゃうのめっちゃ笑った

 

ゼンカイジャーvsボッコワウス、ゾックス&ステイシーvsバラシタラ、それぞれ繰り広げられるトジテンドとの最終決戦を描いた今回のエピソード。とにかく、とにかく激アツであった...!やっぱり戦隊のクライマックスはこうでなくてはなァ

 

最後の最後にして神じゃない方の本物のゲゲもささやかながら参戦。モヂカラでデッカくなったセッちゃんとのどつきあいはある意味凄く見たかった絵面だったので良かった。w

しかし本物ゲゲ、クールな喋りでどこか冷淡な印象だったのでボッコワウス様には素っ気無いんだろうなぁとか思ってたんだけど、実際は「ボッコワウスは俺が守る!!」とか強く言い放つくらいに主人に尽くすタイプだったの良い意味で印象的なギャップだったね...僅かな言動ながら本物ゲゲのキャラ像が一気に深まって何気に良かった 元々ボッコワウス様がゲゲのこと気に入ってたのももしかしたらそういうところが大きかったのかもしれないなぁ、などと思ったり(神はそこにつけ込んで更にベタベタ甘えることでボッコワウス様を手玉に取ったのかもね)

そんな忠鳥っぷりを見せた本物ゲゲだったけど、最後まで神に憑依され良いように体を使われた挙句そのままゲゲに裏切られたと思って激昂したボッコワウス様の一撃を食らわされてしまい、他でもない愛する主人に手ずから粉砕されてしまうという最期を迎えることになったのがあまりに救いのなさすぎる末路で惨かったなぁ...と。それも前述のキャラ像から微かな愛嬌みたいなものを感じ始めた直後だっただけに余計になぁ...香村ァ!! 今までの言動を見るに普段神に憑依されていたことすらも知らなかったっぽいし、最期の瞬間も恐らくは意識が無かったみたいなので、主人にあらぬ恨みをかけられ引導を渡されたと知らぬまま逝けたのはせめてもの救い...だったと思いたい。南無

 

まず前回ラストの時点で満身創痍に陥っていたゾックスとステイシーくんの姿にハラハラさせられていたvsバラシタラ戦。「母の仇を討とうと挑んできた自分の息子達は皆始末した」とここに来てしれっと恐ろしいカミングアウトを入れてきやがったなバラシタラさん...娶った妻やその子供は今どうしてんの、というのを掘り下げれば自ずと思い至るところではあったけれど、こうしてハッキリ口にされるとバラシタラさんの下衆度が一気にグッと増すわね

しかしそんなバラシタラさんを家族も仲間も冷徹に捨て去るが故に体を張ってでも守りたい大切なものを持たない者として鮮烈に描いたことにより、最初からすぐ近くにあるもの“家族”も、気づいたら増えてるもの“仲間”も、自分にとっての大切なお宝だと高らかに語るゾックス自分を受け入れてくれた介人やヤツデといった新しい仲間や家族ー新しい自分の居場所を守るために戦うという強い想いを示したステイシーくんの奮起が、バラシタラさんの精神性の対比となる気高い信念/覚悟として実にカッコ良く光っていたのが熱かった!当初はアウトローで家族以外の者にはあまり思い入れを持たない感じだったところから次第に介人達と一緒にいる時間が増え入れ込むようになっていったゾックスが新たに増えていった仲間である介人達のことも「守りたいお宝」に含めるように言ってくれたのは作品全体通じての積み重ねが感じられてグッときたし、前回のヤツデ婆ちゃんの言葉を胸に刻むように、憎っくき父バラシタラさんの煽りにも応えず「新しくできた自分の生きる場所を守る」ために戦うと真っ直ぐに返すステイシーくんの熱い啖呵にも彼のドラマの極致を感じて凄く胸打たれたし、極め付けにそこからこの二人が同じ「守りたいもののために戦う」者同士としてよりぐぐっと通じ合って息を合わせていく流れに繋がっていくというここの一連の流れがほんと鮮やかで気持ち良かったな...と。「守りたいものができた、お前と同じだ!」とゾックスに澱みなく返すステイシーくん直球に熱くて良いよね...この2人全体的に描写としてあまり劇的に絡んだという印象こそないけど、最後の最後に凄く映える形で関係性を印象付けてくれたなぁ 良かった

 

そんな2人がバラシタラさんに泥臭く食らいついて追い詰めていき、最後に必殺技で競り合い見事打ち勝つ流れも凄く滾りましたな。最後のステイシーくんの「母上...」の一言で、きっちり因縁に決着つけたんだな...とじーんと感じさせられたのがグッときたね 家族、加えてその他の繋がりを軽んじ嘲笑ってきたが故に、それらを全部含めて守るために戦うという決意を抱き戦い抜いたゾックスやステイシーくんに敗れることとなったバラシタラさん、非常に痛快な因果応報でしたな

またここのシーン、直接の戦闘要員ではないフリント・カッタナー・リッキーの3人にも、光線で競り合うゾックスとステイシーくんの背中を支え、バラシタラさんとの押し合いに力を貸すという形で良い見せ場があったのも粋な演出でグッドでしたね。フリントは素顔の戦士達の公演とかでも介人・ゾックス・ステイシーくんと並んで前面にプッシュされてるのが印象的だっただけに、ここで一緒に前線に立って共に戦う様がしっかり描かれたのはとても嬉しいところであったなと。前回のセッちゃんといい、ほんと誰一人欠かさず頑張ってるのが良かったなぁ

 

場面は変わり、今回の話のもう一つの目玉のゼンカイジャーvsボッコワウス戦。イワヤマトピアってなんだ...デュアルクラッシャーやら破邪百獣剣やらと、色んな戦隊の世界の力をも取り込み戦闘形態となったボッコワウス様による懐かしの必殺武器を使った怒涛の攻撃はなかなかに見栄え良しで楽しめましたわね 「トジテンドハリケーン・『家族』!!」で五色田夫妻&ヤツデ婆ちゃんがゼンカイザーに突っ込んでくる絵面はあまりにもシュールで笑ったが。w 「家族の繋がりを大事にする介人に家族が攻撃してくる」て感じで文脈的にはかなりエグいんだけど絵面が超絶面白いすぎるんじゃ()

ボッコワウス様、今までどっちかというと三枚目的な振る舞いが多く、戦う場面も殆ど無かったのでここにきてどれだけ威厳を示せるかがミソになるなと思っていましたが、ゼンカイジャーを蹴散らした後の「そうだ、愚民どもは這いつくばっていればよい!キカイトピアに...いや、どこの世界でも君臨するのは、我がトジテンド王朝!遥か昔から...揺るがぬ事実だ!!」の台詞が全ての人々/世界を見下し虐げてきたトジテンドの頂点らしい威圧感と傲慢さを湛えており非常に良かったなと。中田譲治さんの渋すぎるお声のパワーも相まって、シンプルながら圧政を敷く狂王という感じのキャラ像がズバッと決まって良き大ボスだった

 

一方で、そんなボッコワウス様の圧倒的な存在感を前にしつつも怯むことなく闘志を燃やした介人達の勇姿もとても熱く鮮烈でありました。変身できない絶望的な状況の中でも、「他の世界のスーパー戦隊達も同じように巨悪と戦い世界を救ってきた」という事実を胸に刻み、自分達も今まで全力で戦い続けてきた“戦隊”として生身の姿で「機界戦隊ゼンカイジャー」を名乗り立ち上がる、という「たとえ変身できなくとも...!」的な王道のフォーマットを、ゼンカイジャーという作品が一つのテーマ/柱として据えていた「スーパー戦隊」という正義の戦士達の在り方を介人達ゼンカイジャーが心で理解し立ち上がるという流れに乗せることで劇的に昇華させた展開運びはまさに白眉であったなと。最高に燃える生身名乗りだったぜ...!メタ込みで身も蓋もないことを言っちゃうと、変身前も変身後もスーツのキカイノイド組がメンバーの半数以上を占めてる中だと正直生身変身のありがたみが半減する面もあったと思うのですが、そこにおいてドラマ的な文脈をがっつりと強化し「生身で名乗ること」に大きな意味を持たせる形で盛り上げたのは素晴らしかったですね

またここのシーンにおけるスーパー戦隊」という大きな括りのテーマの扱い方も実にグッときたところでありました。この「スーパー戦隊」という要素は今までゼンカイジャーという作品において、あくまでも作品を引き立てるエンタメ的な一要素としてエッセンス的に扱われてるところが大きく、この最終盤でも大きく前に出るとまでは行かないかもなとちょっと思ってたのですが、この最終盤にて介人達ゼンカイジャーの世界を守るヒーローチームとしての覚悟を描くにあたり、彼らのスーパー戦隊の一員たり得る信念を引き立てる重要な要素としてしっかり前に押し出し、見事にストーリーの流れの中で作品を形作る重要なテーマとしてぐぐっと昇華させたのはまさに見事の一言でしたね。そう思うと、ジュランが「他のスーパー戦隊のみんなもきっと全力で戦い世界を守ってきたんだ」と言って「自分も同じように守ってみせるぞ」と自身を鼓舞した流れ等も含め、この最終決戦は真の意味でのゼンカイジャーのスーパー戦隊襲名、精神性の継承を描く物語でもあったよなぁ、などと。

トジルギアに閉じ込められたスーパー戦隊達本人に関しても、ついぞその姿を直接描くことこそ無かったものの、トジルギアの中から自分達を取り込んだボッコワウスに抵抗し隙を作ると共に、ゼンカイジャー達に変身のための新たな力を与えるという形で印象深い活躍を与えていておおっとなったし、 ほんと良い意味で意表を突かれたテーマ性の昇華だったね

 

そしてここからのボッコワウス様との決着。全員が持てる力の全てを振り絞って戦い、その末に見事に撃破する流れは最高に燃えたね...世界を侵食し閉じようとするトジテンドに最初から最後まで真っ正面から立ち向かい続けてきた介人長きに渡り理不尽に虐げられてきた怒りを力に変え悪逆の王を討つべく仲間達とその懐を狙い続けてきたジュラン達、的な構図を象徴するかのように、介人は正面から、ジュラン達は背後から、 という両面打ちでボッコワウス様を撃破する象徴的な画がまたグッときたね...

王族の者達や自分を慕う者達を犠牲にし取り込み、繋がり理解し合うことも出来たであろう多くの人々が住む他の世界をも閉じて取り込み、“一人”強大な力を持って堂々と立ちはだかったボッコワウス様だったけど、皮肉にも家族の絆や多くの人々と得てきた繋がりを力に変え共に戦い続けてきたゼンカイジャーに敗れることとなった、というのがなんとも皮肉で良い対比でしたな

でも自分で破壊したゲゲの亡骸を見て嘆き悲しむという支離滅裂な言動を示してたのを見るに、ボッコワウス様もその邪悪な狂王としての人格の裏にどこか他者との繋がりに飢えてた節があったんじゃないかとも感じられるところで、もしかしたら、他者を虐げ支配する王朝の中で「家族/一族を犠牲にし取り込む」という因習に囚われ続け、支配することと誰かと純粋に繋がることとの狭間に精神を晒し続けた結果、心が擦り減り常識が壊れてしまったか、もしくは精神が歪になり「狂王としての自分」と「他者との繋がりに飢える自分」というある種の二面性が漠然と生まれていたか、 なんて悲しき悪役的側面もあったのかもなぁ、と妄想してみたり。まぁあくまで妄想だし、今までやってきたことは断じて許されないからこそ前述のゼンカイジャーとの対比がしっかり効いた悪役としての存在感が映えているのも間違いないけどね

 

こうしてトジテンドを完全撃破し換気に浸る介人達。

しかしその裏ではゲゲ...もとい神が怪しげに暗躍、介人の身体を得て元の世界へと戻ると、自身が発動したトジルギア装置により再び全ての世界をギアの中に閉じ込めてしまった...という勝利の余韻を打ち砕く衝撃的なラストで締め。おまっ...ふざけ...!物語を機械仕掛けの装置で強引に畳む神、というこの構図、ちょっと意味合いは違うかもだがまさしく機械仕掛けの神=デウス・エクス・マキナじみてるな...と

なんか神のこの行為、トジテンドを倒すのに協力してた今までの行動を踏まえると元も子もない感じだけど、最近キカイノイド達をキカイトピアに戻して回ってたことを思うに、もしかしたら介人達の世界に混じったキカイトピアの要素が全部元キカイトピアに戻った=その世界のものが全て元あった世界に戻ったタイミングを見計らってギアに閉じ込めたかった、つまりは全ての世界を元々の形に戻した上でもう交わることもない状態にしたかったのかな、などと思ったり。神として「交わった世界や閉じられた世界を元あった形に直そうとしている」のでは、というのは前々からちらほら考察されてたしね 五色田夫妻が元いた世界に戻ってきたタイミングで行動に移ったのも計算づくか? トジテンドに忍び込んで動いてたのはトジテンドが色んな世界をトジルギアに閉じ込め整理してくれるのが都合良かったからってだけで、偶発的に介人達の世界とキカイトピアが交わったことを受けてそれらを元あった形に戻す必要が出たから介人達に利するようになった、みたいな感じはしそうだなぁ そうなるとトジテンドを自分の都合でいいように振り回し破滅させたことになるので、相手が相手だし結果オーライなとこもあるとはいえだいぶ邪悪だが...世界と世界、そこにいる人々が出会い繋がり得ないようにしてしまう、というところで、その繋がりを重んじる介人達とは大きく対比する形になったと思うが、果たしてこの辺が次回どのように紐解かれるか

 

 

以上、ゼンカイ第48話でした。作品のテーマや各キャラが持つキャラ性・これまでの物語の積み重ねを余すことなく印象的に描き出す重厚なドラマに乗せ、(実質的な)最終決戦を熱く盛り上げた最高のクライマックスでありました。スーパー戦隊という大きな括りのテーマも最後の最後にしっかり活かしてきたの良かったなぁ

しかし物語はまだ残すところあと一回。ゼンカイジャーという作品が最後に描き出すものは何か、期待して待とうと思います

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた