AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

世カイ全カイ、オールオッケー

機界戦隊ゼンカイジャー

最終カイ

「俺の世界、みんなのセカイ」

感想レビュー

 

 

言えやセッちゃん...「前回のォ...ゼンカイジャーは“ァ”ーッ!!」ってよォ〜!!! 前回の引きからして今回はセッちゃんの冒頭の口上無いだろうと予想されてたけど、マジで無いと一瞬空白感があるよな...セッちゃんの存在は偉大だった

 

神によってあらゆる世界がトジルギアに閉じられた前回の衝撃的なラストから引き続き、ただ一つ閉じられることを免れた介人達の世界の模様から始まった今回。皆がキカイトピアやトジテンドのことを忘れてしまった中、全ての記憶を思い出した介人が神と相対する展開が描かれました。駒木根くんの白介人もとい介人の姿を取って現れた神の演技、余裕ある超然とした雰囲気の醸し方が凄く絶妙で、モノホン介人との二役を一画面で一度にやってたのもあってその表現力の高さがより際立ってたなぁと。ゲゲやステイシーくんに憑依してた時の甘ったるい喋りの雰囲気がしっかり踏襲されてたのも良かったところであり、鈴木さん/福西さん→世古口くん→駒木根くんという別々の演者さんの演技がきちんと「神」という一つのキャラのものとして纏まってたのが見事でした

 

今回は今まで謎めいていた神の真意に関して(今までの行動や前回の話のラストの描写から大方想像はできたけれど)、「自分が生み出した無数の世界の『整理』」が目的であったと本人の口から遂に直接明言されました。世界を「閉じる」ことのできるイジルデのトジルギアの技術が「世界を消さずに「記念として残しまとめる」のに都合が良かったから最初トジテンドについてたことや、同じ「ギア」に技術を持つ世界同士で介人達の世界とキカイトピアが混ざった故にどちらか「面白い」方を残すように動こうと思い立ったことなど、作品の根幹にも関わる部分も語られ、残された謎もスッキリしましたね。神にある意味で評価されていたイジルデ、最後の最後に誉れができたように思う。良かったな!

せっかく作った世界を消してしまうのは「勿体無い」と考えたり、介人達の世界とキカイトピアを見て「面白いと思った方を閉じずに残してやろう」と思いついたりといった、「無数の世界は自分が作った自分の『所有物』」的な観念が根底にあるからこその、世界の命運を悪気なく掌の上で転がすあの立ち居振る舞いや考え方はなかなかに超然とした雰囲気があって良い存在感でしたね神。介人達をはじめとしたそれぞれの世界に生きる人々に関してもその意思を認め普通に接する一方で、その尊厳や自由、生き死ににはそれほど頓着がなさそうな感じの言動をしていて、そういった人々のことを「自分の作った庭を歩き回るありんこ」くらいにしか思ってなさそうな感じがしてたのが鮮烈であったなと(生命というものを軽んじてるってわけではなく、「大切に慈しもうという意識こそあるけど、庭のリフォームとかしようと思う時にいちいちありんこ達一匹一匹のことを気にしてはいられんでしょ?」的な捉え方をしてそうというか。介人達とトジテンドの戦いの行方、ひいては介人達の世界とキカイトピアどっちが面白いかを見極めようとしてるのもあくまで「庭で虫と虫が喧嘩してるのを見てどっちが勝つか見守ってる」的な感じだったんだろうなぁ)

にしても神、前述した通り色んな人の身体を借りたり介人の姿を模しての登場をしたりしてたので、表立って動いてる期間もそれなりにあったのに特定の姿や実体を最後まで見せることが無かった(そもそもそういうものすら無かったかもしれない)存在、という戦隊シリーズ、引いては特撮ジャンル全体、果ては創作全般で見てもなかなか見ないような特性を持ったキャラとしてかなり際立った印象を残したのは凄いよなぁと。スーパー戦隊シリーズという長期シリーズにおいて登場した『作りすぎた世界を整理しまとめよう』と考える存在」という立ち位置が「多様に広がりすぎたシリーズを舗装し綺麗に畳もうとする画面の向こうの存在のメタファー」的な趣をどこか感じさせる(この辺はゼンカイが白倉P主導の作品だからそう感じる部分もあるかも。ディケイドのテーマといいジオウのクォーツァーといいその手のメタ的な存在描くこと多いし)のも相まって、作品世界の枠組みの外からやって来たかとも思わせるような雰囲気を感じさせるような独特さ、底知れなさを纏った良いキャラ造形だったなと思います

 

そんな神に対し「それぞれの世界に生きてる人がいて、色んな世界と繋がりそんな色んな人々と出会ったからこそ沢山の物が得られた」と、ジュラン達様々な人々との世界を越えた出会いでかけがえのない絆を手にしてきた介人は反抗、世界の解放をかけて神と対峙することとなりました。介人が神に色んな世界に生きる人々がいるということを語るにあたって、第27カイでの色んな世界への渡航の描写をさり気なく入れてたのは地味に良かったところ。直接目にしたからこその言葉の強さが出た感じあったよね 他の方も言ってたように神自体の本質はあくまで「悪」とかではなく我々と視点・視野が違いすぎる的なところにあるという感じなので、そこにおいて「世界を跨ぎ絆を繋ぐ介人」「世界を閉じ繋がりを断絶しようとする神」の相対する在り方そのものの純然たる対峙を描き、作品のテーマ性をググッと引き締めてきたのは良きところでした(悪意を持ってそういった繋がりを絶とうとしてくる相手との対決というのは前回のトジテンドとの決着において熱く描かれたわけだし、今回は神という存在の在り方を絡めることでそこをもっと純度高めなテイストで描く形になってたというか)。

 

介人vs神の戦いは熾烈を極め、「皆がいたからこそ今まで戦ってこれた」という言葉を体現するように介人が自身の中に宿る仲間達の力や繋がりを糧に仲間達の姿となって戦う、という感じでなかなかに熱い展開へ。そしてその戦いの末、介人が「最後の勝負」として神に突きつけてきたのはー

 

「最初はグーで!一回勝負な!!」

 

「......はぁ?」

 

じ ゃ ん け ん

素で神の「はぁ?」にシンクロしたわw

実質的な王道ストレートの最終決戦は前回やったとはいえ、あまりに前代未聞の最終決戦すぎてリアタイ時マジで度肝を抜かれましたわよねここ...w おそらく本当の本当に「世界初」の最終決戦まであるわけで、実にゼンカイジャーらしかったなぁと いやここでそこまでやらんでええのよ()

と、めちゃくちゃ力抜けそうなまさかのじゃんけん最終決戦であったけど、グーを出した神に対し介人が名乗りの際「5人揃って!!」の掛け声と共に繰り出すパーの手によって勝利、というのが、介人と仲間達の「ゼンカイジャー」という繋がりの象徴がもたらした勝利のようで物凄く熱く、思いがけずグッとこさせられちゃいましたねぇ 良い意味で裏切られたね...!「神の『閉じる』手が介人の『開く』手に負けた」とか「本人の意思が形として反映される精神世界だったからこそ『自身に作った世界を本当は壊したくない』と心の底で思っていた神が『絶対に勝って世界を救いたい』介人に負けた」といった更に熱い考察も見られて、そこでもグッときちゃったね

ザギザギ/ZAGIZAGI on Twitter: "介人が「開く手」で勝ち、神が「閉じる手」で負けたのか……"

さめ on Twitter: "「神様もぶっちゃけ世界を閉じるのは勿体なかったな~と思ってたので、意思が事象として反映される超空間でジャンケンをすれば『絶対に勝ちたい介人』と『どうするか悩んでる神様』の構図になり介人が必ず勝つ」、絵面はアホだけど理屈は通ってる構図を最後までやり切ったな……"

こうして介人とのじゃんけんに敗れた神も潔く負けを認め、「今在る世界もこれから作る世界もしっかり大切にしてほしい」「沢山の世界がある方が楽しいから、これからも沢山作って大切にして欲しい」という介人のお願いを笑顔で聞き入れ身を引く形となりました。どういう形になるか気になってたけど神周りも凄く気持ち良く纏まってて良かったなぁ

 

そして神が教えてくれた場所に隠されたトジルギア装置を介人が破壊したことで世界は解放、ジュラン達も再び介人の下へ戻ってきて皆でトジテンドとの最終決戦以来の再会を喜ぶのだった...!という前回の流れからストレートに見たかった感激感動な展開を経て物語はエピローグパートへ。

その後介人達の世界は世界を救ったゼンカイジャーの名にちなんで「ゼンカイトピアと名付けられ、ゲートを通じた並行世界間の交流が盛んになった、という人種のるつぼならぬ世界のるつぼ的な世界観へと纏まっていったことが語られました。ゼンカイのメイン構成である香村さんが担当されたジュウオウジャーでもラストはそういう感じの展開だったので、知らない人・知らない世界が何かの境で区切られて沢山存在してるなら、その境を取っ払ってみんな一緒に触れ合えた方が楽しいじゃん!的な垣根を越えた交流こそを素晴らしいと思ってるとこあるのかもね香村さん 介人の言葉を体現した実にらしい形のまとまり方でしたね 世界において国を跨いだ大変なことが巻き起こってるこの2022年2月に被さる形での放送となったわけだけど、だからこそ沁み入るものがあったよなぁ、とも思うところ。介人が神に「色んな世界があったから君の両親は攫われたんだろ?」に対し「悪いのは世界じゃない!そういう人もいるってだけだ」と返してたのもまた奇しくも今の世界情勢の中だと響くものがあったなと感じました(こういうの言うのは不謹慎だったかもだけど、やはり言っておきたかったので)。

heikayuuji on Twitter: "2022年2月の終わり、世界情勢が今混乱しているこの時に、ヒーローの口からこのセリフを聞くことができた意味 しかも最終回という局面で。 #ゼンカイジャー #nitiasa… "

 

またその後のメインキャラ達のその後も次々に描かれ、復興が始まったキカイトピアでブルーンが学校を手伝ったり一人で踏み出せずにいる子供にマジーヌが声をかけ話をしてあげてたりと、各キャラの人となりに沿った成長や前進が窺えたのがグッときたね。悪いことに沢山関わってたであろうクダイター達が警察の御用になって反省してたり、改心した下っ端のクダック達が他のキカイノイド民達と仲良く過ごしてたりと、キカイトピアが少しずつ良い方向に向かってるのが窺えたのが良き ゾックスやフリント達も弱い者達から界賊行為はしないという義賊的な方向に進み始めたのが語られて、介人達に凄く影響されたんだなぁ...と微笑ましくなる。w 無事SD化から戻ったカッタナーとリッキーがギアの効果でまたSDの姿にもなれるようになった点なんかも、身も蓋もない話で言えば「後年のスピンオフや客演で登場しやすいように」的な狙いがあるんだろうと感じる一方で「呪い」として嫌ってたまであるSDトピアにまつわる事象をカッタナーとリッキーが「SDも悪くないよな!」的な感じで受け入れるようになった、みたいな象徴的な深みも感じられたのでそこの掘り下げ方が地味に良かったなぁと

という感じで描かれるメインキャラ達の後日談の中でも特に沁みたのはやはり、なんと言ってもステイシーくんのそれだったと言えるでしょう。最終決戦時の宣言通りに笑顔でカラフルに足を運んでくれた時点でもうたまらんかったし(ヤツデ婆ちゃんが「ステイシーくん」って呼んでくれてるのがまた)、ヤツデ婆ちゃん達の「一緒の暮らす?」という問いに「カラフルが大切な場所だからこそ、ここは息抜きに来られる場所にしたい」と前向きに返したり、「やりたいことができた」と言ってかつては苦しみの象徴だったトジテンドのあったキカイトピアで復興のためにみんなで明るく頑張ってたりと、因縁をすっかり振り払い、ちゃんと未来に向けて進んでいけてるんだなぁ...と感じられたのでもうめちゃくちゃ感動したよねぇ。カラフルを敢えて「帰る場所」ではなく、「またいつでも来られる場所」として大切にしてくれたの、涙出ますよ...キカイノイド民達の王への推薦を断り「みんなと一緒に歩んでいく」という道を示しみんなを勇気づけてるところなんかにも、色んな人達に目を向けられるようになったことが感じられておぉ...となったし、1年間通してほんとに良く成長し変われたよステイシーくん...ゼンカイジャーという作品を象徴するもう1人の主人公的存在として実に魅力溢れるキャラであった

 

そしてラスト、両親達の後押しもあり、 色んな世界を渡り歩き見て回る旅へと出ることを決心。介人と一緒に行きたいとついて来たジュラン、ガオーン、マジーヌ、ブルーン、セッちゃんと共に、新しい世界へ向けて一歩を踏み出すのだった、 という様子をEDテーマとEDクレジットと共にお届けするという流れでゼンカイジャーの物語は締め。介人の画面に向けた「行ってきます!」には思わず「行ってらっしゃい!」と返しちゃったよねぇ 最後の最後に最終回サブタイの「俺の世界、みんなのセカイ」が出てくるのが最高のタイミングでもう最高(語彙)

ここのラストシーンで「ゼンカイジャーは戦うために集まった奴らじゃなく、みんな介人のことが好きで集まった奴ら」だとまとめてくれたジュランの言葉も非常に良かったね。最初はみんな介人に惹かれて集まったんだもんなぁ 最後まで良い年長者してくれたなぁジュラン そんなみんなが一緒に旅する仲間として介人と共にまた新しい場所へと前進していく、実に爽快で素晴らしいラストだった!良かった

 

 

以上、ゼンカイ最終回でした。もう本文の方で言うこと全部言ったので一言、最高でした。今まで物語の中で積み上げてきたあれやこれを、キャラクターの成長・前進、テーマ性の昇華といった様々なポイントにおいて見事に「機界戦隊ゼンカイジャー」という一つの作品として描き上げた素晴らしい最終回だったなと。前回共々非常に濃密な内容ながらそこで描かれた全てがしっかり印象深く綺麗に纏まっていて感嘆するばかりです 見事

という感じでゼンカイジャーも遂に1年間走り抜きました。全体通してエンタメ性もドラマ性も非常に高く通年で非常に楽しめた素晴らしい作品だったなと。戦隊アニバーサリーに相応しい存在感でした。製作陣の皆様、演者の方々、改めてお疲れ様でした。

まだまだVSシリーズもあるし、記事の方もいずれ総括を書く予定でいるのでまだまだ続くかも、ですが一先ずはここで。楽しかった!ありがとう

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた