AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

繋ぐ光

ウルトラマントリガー エピソードZ

感想レビュー

 

 

※本レビューはネタバレを多分に含みます。未鑑賞の方はご注意の上、鑑賞された後に読んでいただくことをお勧め致します。

 

 

ユナの「マナカケンゴぉ!!」呼び(ケンゴのフルネーム呼び)、ケンゴの目を覚まさせるために自分達の仲間である「『人間』マナカケンゴ」の名を強く呼ぶ、的な熱い意味合いがこもっているのは感じられるんだけど、どうしてもカルミラが頭をよぎってしまうのでふふってなってしまうんよ() しつこく擦りまくるからTwitterの方でもミーム化してんだよなぁ...w

 

TV本編から2年後を舞台に、ケンゴの帰還やゼット/ハルキの客演、闇の巨人イーヴィルトリガーの参戦といった様々な見所を擁したストーリーが展開された「ウルトラマントリガー」の劇場公開作品、遂に3/18(金)の封切りと相なりました。全国の各種劇場での上映のみならず、劇場公開開始と同時のTSUBURAYA IMAGINATION での独占配信も実施されるという、昨今の情勢を踏まえたが故であろう方式が採用されたことで注目されていた本作でありましたが、自分もTSUBURAYA IMAGINATIONにて封切りと同時に速攻で鑑賞。ウルトラマントリガーという作品の大団円とも言える作品、しっかりと見届けさせていただきました。

というわけで本作に対する自分なりの感想を今回はあれやこれやと書き綴らせていただいたので、お時間があれば是非お付き合いを。

 

 

 

 

 

まず本作で目を惹くところとしましては、なんと言っても特撮面の豪快さ。アクション面、合成面等ひっくるめ、この辺は流石のニュージェネシリーズといった感じで安定感が高かったですね。特にケンゴ不在のGUTS SELECTの奮闘が描かれる前半パートは目を見張るものがあり、鉄橋を破壊しながら湾口を進撃するパゴスのパワフルな演出TV本編と同様縦横無尽にフライトするガッツファルコンのCG進撃するパゴスとそれを追うアキトとユナ、滑空し追尾するガッツファルコンという三者を自然に合成し同居させた1カットなど、TV本編に負けず劣らずのハイクオリティな特撮が惜しげもなく繰り出される冒頭パートは掴みとして上々でありました。中でも最初のパゴスのシーンは怪獣特撮の迫力が存分に押し出された実に力の入ったシーンとなっており、本作全体で見ても特に特撮レベルの高い箇所だったのではないかなと 実際自分も全体比で言うと本作の中では一番に見応えがあった所でしたし、自分の周囲の方々も「パゴスのシーン凄く良かった」と掛け値無しに評価していましたし、大きな評価点ですね

またこの冒頭の戦闘シーンといえば、トキオカ隊長が使用していた巨大兵装のインパクはやっぱ大きかったよなぁと。担いで使う巨大武器というのはやはりぱっと見で「おおっ」と惹きつけられるし、劇場公開作品ならではのTV本編以上の外連味の出し方として良かったところでしたね。後のシーンでもガンガン使われて見映え良かったし何気グッドなポイントだったなと

 

そしてストーリー面。ここの最大の見所はなんと言っても、ウルトラマンにして人間」というケンゴの側面にフォーカスし、「トリガーが人間・マナカケンゴとして生まれ変わった意味とは何か?」という部分を問うたストーリーラインだったと言えるでしょう。

「闇の巨人・トリガーが光を得て人間へと転生した」という特殊な出生がキャラクターとしての大きな特徴となっていたケンゴでありますが、本作ではそもそも何故光はマナカケンゴという「1人の人間」という形を取ったのか?」というところを取り上げ、その現象の意味そのもの、引いてはウルトラマントリガー/マナカケンゴの存在の意義を問うて切り込んでいく作劇を取ってきたことが非常に面白いアプローチだったなと。トリガーがケンゴになったこと自体、SF作品・ファンタジー作品に時折見られる「そういうもの」としてナチュラルに捉えてたポイントであり特に気にしてなかった(当時それ以上に気になるとこが多すぎてそんなこと気にもしてなかったと言った方が合ってるかもだが...)部分であったが故に、そこを明確に軸に据えてきたのは意表を突かれたところでありましたね ウルトラマンにして人間」という要素はこれまでのウルトラシリーズでも時折用いられてきた要素でこそありましたが、その多くは「ウルトラマンの力を手にした人間の葛藤」というところにフォーカスしたものであり、「トリガーという巨人が光を得て新たに人間として転生した存在」として「人間が先かウルトラマンが先か」というところが従来のシリーズとは逆転した独自の背景を持ったケンゴは特異点的な存在であったので、そこを拾ってきたのは要素の活用としても良かったですな

 

そしてこの問いへの解として、変身能力の一時的な喪失を受けて人間かウルトラマンかという自身の在り方に惑い焦るケンゴ、そんなケンゴを支え共に戦うアキト達仲間の存在の描写を通じ、「1人では輝くことのできない一人の人間として生まれ変わったことで、多くの仲間達と繋がり、共に強く輝くことができたのだ」というドラマチックなメッセージ性を示してきたのは実にグッときたところでありましたね。人と人の繋がりの象徴、という意味合いを付与することで作品のテーマ「笑顔」をグッと劇的なものにしてきたのが見事だったなぁと。第1話サブタイトルの「光を繋ぐもの」がここでバチッとハマるのも良き

ここにおいて、ケンゴとGUTS SELECTの仲間達の繋がり、という部分の描き方にも光るものが感じられたのがまた良かったところ。正直なとこTV本編だとケンゴアキトユナのメイン3人以外との繋がりは掘り下げの不足もあってそこまで劇的に活かしきれていたとは言えない部分があったので、TV本編単体だとここの積み上げは弱かったと言わざるを得ないものの、本作では「ケンゴの帰還」というところを軸にしたことで本編全体を通してその辺を改めてじっくり描けていた感じがあり、更にそこに第17話をはじめとしてTV本編で曲がりなりにも描かれていた「ケンゴ/トリガーを助け支える仲間達」の描写の積み上げを加えたことでドラマとして実に映える絵作りを成していたところが非常に良く、その分本作のテーマ性およびTV本編における物語の昇華としてとても見応えがありましたね。TV本編だと上手いこと描かれてた印象の薄い、隊長テッシンさんヒマリマルゥルといったメイン3人以外の面々に関して、それぞれのキャラがしっかりと表れ出た言動、各人の役割をしっかり担う形での熱い活躍といったところをきっちり描いていたのも良いところだったよなと感じますね(テッシンさんのケンゴへの「勝ってぇぇ!!大笑いしてやろうぜぇぇぇ!!!」という激励とか凄くらしい台詞回しで何気に好き)。ようやっとちゃんと生きたキャラ描写として決まったなぁという感じがあったわね

またこの描写を描くにあたり、原典たるティガの「人は誰でも光になれる」という要素を引用しつつ、そこにプラスして「それでも一人では強く輝くことはできないからこそ、人は心と心でそれぞれ共に繋がり、皆で強く輝くことができる」という旨の文言を与えることで、ティガへのリスペクトを示しつつしっかりトリガーという作品ならではの味わいとしたところも粋な白眉でありました。どんな時も諦めず共に未来を信じる気持ちを持って進むことが大きな力となり輝きとなる、的なところはちゃんとティガ最終盤の展開や本作に共通して通ずるところであるし、そこにおいて人と人の繋がり...笑顔をリンクさせ強調したことはちゃんとトリガーという作品のテーマ性を引き立たせている、とうう感じで、まさしく「ティガを継承する作品」としての「ウルトラマントリガー」という作品の味の出し方として自分が理想としていたものそのままだったのでグッときましたね。この話の流れを踏まえた上でケンゴの在り方をウルトラマンになれるだけのただの人間」とビシッと定義してきたのも、ティガの作劇の妙味と通じるところがあったし、こういうのが見たかったのだ...!と素直に感嘆しました

 

加えて、このケンゴを軸としたストーリー展開の中、ケンゴのある種の対比となる存在として配置された、本作のゲストキャラにしてイーヴィルトリガーとなる者・トキオカ隊長...もといザビルのキャラ性の描き方も凄く良かったところでありました。超古代の闇の巨人達との戦いにおいて、慕っていたユザレをはじめとする仲間達が次々犠牲になっていった中で、強大な力を持った巨人・トリガーがあっさりとその戦いを収束させたことに対し「自分達の戦いはなんだったのか?」という虚脱感ともやるせなさともつかない想いを見せ、同時に「人類が自ら光となれば良いのだ」という執着にも似た目的意識に囚われていく様はわずかな描写の中にも真に迫る強い感情が感じられ、一キャラクターとしての完成度の高さに思わず唸らされましたね...目的自体はティガに登場したマサキケイゴやそこから派生し次作ダイナにおいて登場したF計画といった要素のオマージュを感じさせつつも、ウルトラマントリガーの物語の歴史に沿った独自のキャラ性をしっかりと確立させている点もグッド  「大いなる光の力に歪んだ執着を抱き自らがそれになることで人類の上に君臨し輝こうとしたザビル」がいたからこそ「大いなる光そのものでもある自身の在り方に苦悩しながらも仲間達と共に一人の人間として強く輝いたケンゴ」の想いが光った、というところで本作の魅力の一端を大きく担っていたといっても全く過言ではないなと感じるところであり、そういう面も含め個人的には今までのニュージェネ劇場作品のゲストキャラの中でも一、二を争うほど魅力あるキャラであったなぁと。良かった正直トキオカ隊長がイーヴィルトリガーになるだろうということ自体は予想できていたけど、ここまでしっかり背景やキャラのディテールが作り込まれてるとは思ってなかったので嬉しい誤算だったわいね

 

という感じで特撮面・ドラマ面での良き部分は多く面白かった一方、引っ掛かった部分もまた多かったなと個人的には感じるところ。

まずドラマパートなのですが、上述したストーリーの魅力ある部分は主に前半部分に集中しており、トキオカ隊長がケンゴに「光は何故人間として生まれ変わってきたのか」と語りケンゴがそれに想いを巡らすシーンの雰囲気なんかは独特のちょっとしっとりした空気感で描かれいたところが「おっ劇場版ならではのドラマの描き方がされてるな」と感じられて観ていて気持ちが上がったのですが、後半に入るにつれて、ここはバシッと決めて欲しい!と感じたところの流れが思ってたよりあっさりめだったなぁと感じることがあったり、キャラの細かな台詞回しで魅せて欲しいなと感じたところがひたすらキャラに叫ばせたりといった少々力押しっぽく感じる描き方をされてたりと、前半に比べ少々風情を掻く絵作りっぽい感じになったと感じられたのがちと残念。特にザビルは先にも述べたキャラの背景を描き出す前半の描写は強く目を惹くものがあった分、後半で「私こそが神だ!!」みたいな感じの発狂した振る舞いに転じていってしまったのが「いつものニュージェネの悪役」みたいなところに結局収束してしまったなぁという印象を抱いてしまいちょっとガクリとなってしまったなと(力に溺れ自身の目的の根底にあった想いを忘れ暴走し始めた、みたいなニュアンスなのは一応見てとれるのだけど、その辺の描写が基本ザビルの一方通行な感じでしか描かれないので映像上の流れだと急に目的を翻し始めたように見えてしまうところがあるのよね)  またザビルに関しては、その背景にウルトラマントリガー本編の流れのあれやこれやを答え合わせ的に集約させすぎてた面があったのも個人的にはあまり好きでなかったところ。元々自分がその手の描写があまり好きではない(どうしても後付け感を感じてしまうし、理屈っぽくなってしまうので)のはあるけど、せっかくしっかり掘り下げられていたザビルのキャラ性がややごちゃついた感じがしたのがなんとも、という感じだったんですよね(あくまで映画のゲストキャラ、ということでもっとコンパクトにまとめた方が洗練されて良かった気がする)

加えて特撮面も、前半がなまじ凄かったのもあるけどクライマックスの戦闘はどうも絵面が単調で引き立つインパクトが無いような感じになってしまっていて、相対的に盛り上がりきれなかったのがなんとも。新規の敵キャラがイーヴィルトリガーくらいしかいなくて絵面がどうしても新鮮味に欠けてたし、アクション面もなんか普通の塩梅に収まってた感じがあって目を見張るものが少なかった感じであった 最後の敵が急に巨大化してきたイーヴィルトリガーだったのもなんかなぁ...最終決戦の外連味の出し方としてはちょっと安直なところに収めた感じがした  総じて劇場作品なりの趣みたいなものをここぞで欠いてしまった印象があり、そこが惜しいところでありました。

 

またそれらドラマ面の尻すぼみ感に少なからず影響したであろうところとして、要素の詰め込みが目立ったのも個人的には引っ掛かったポイントでありました。パワータイプ&ベータスマッシュのプロレスファイトとか、アキトとユナがお化け屋敷にキーを探しに行くパートとか、劇場作品としてボリューム感を出そうと付与したエンタメ要素だったのは感じるけど、自分としては先にも述べたケンゴ周りのドラマをちょっとシリアスめに回そうとしてる雰囲気に惹かれてたのもあり、ちょっと不自然に入れ込まれた感を受けてしまったんですよね 前者はともかく後者はシンプルにドラマの流れをぶつ切りにしてる感じがあってどうもモヤッとしてしまったし(中盤の余裕ある場面でやってたので不自然ってわけではなかったんだけどね)

 

そしてそんな要素の詰め込みという面において大きな割合を占めていたと感じられたところとして、本作の目玉の一つでもあったであろうZサイドの客演・諸要素の取り回し方は正直かなり気になってしまったところ。身も蓋もない話、本作の展開運びとしてはゼット/ハルキが本作のストーリーに関わってくる必要性自体が物凄く薄く、ゼット/ハルキが話のおまけ程度にしか感じられなかったんですよね。最近のニュージェネ劇場版では前作からの客演キャラが現行キャラとそれぞれのキャラ性を活かした絡みを見せドラマを引き立てるという作劇が為されるのが割と通例となっていたし、特にトリガーサイドのストーリーに掛かるでもない一客演に終始してたのはちょっとなぁと感じてしまったところであった 活躍自体はまぁ良くも悪くも無難という感じではあったし客演要素としては悪くないんだけど、前述の通りケンゴ達と深い絡みをするわけじゃないからストーリー面の起伏に影響してないし、申し訳ないけどこれだったらいっそ取っ払って純粋にトリガーの物語としての描写に注力した方が良かったと思ってしまうなぁ

また(予告時点で示唆はあったけど)ある種の隠し球としての登場したZのメイン悪役・セレブロ、およびそれに付随しての参戦となったZのラスボス・デストルドスの扱いも正直言って納得できていないところ。エピソードZを観た他の方も言ってるようにやっぱりセレブロはZの物語を代表する悪役としてあの作品の中で因果応報となるところまで含めちゃんと完結されたキャラだと思うのでそれをわざわざ引っ張り出したのはそもそも論としてなんだかなと思ったし、それでも本作のストーリーをめいっぱいかき乱したりだとかしっかり活躍してくれたらまだ溜飲も下がったものを、「ザビルの協力者」的な扱いの一敵キャラみたいな感じで悪い意味でこじんまりと収まってしまっていたので、ほんとにただただZからの客演要素として引っ張ってきて添え物にしたくらいにしか感じられなかったのはちょっとうーんという感じだったなぁと 暴れるだけ暴れて元の形に収まった、という感じだったのはまだ良かったけど(正直本作で爆散させられてもおかしくないだろと思ってヒヤヒヤしてたからさ...) でもそれだったらやっぱ出さなくても良かったな...になってしまうのよな  デストルドスの方も同じような感じで、オリジナルよりかはなんぼか格落ちした存在であるような設定で描かれてたとはいえ、仮にも前作のラスボスだったキャラがここで一敵キャラ落ちしたのはちょっとなというところでしたね。個人的なZへの思い入れの強さもあるからではあるけど、グリッタートリガーエタニティにあっさり瞬殺される(瞬殺される流れを作られた)ような扱いで済ますのはちょっとなぁ...と思ってしまった あの辺メツオロチとかと同じ扱いを感じたし、トリガーにおける怪獣の扱いの軽さがここでも出てしまったのは正直ヤなところであった 

という感じで、エピソードZのタイトルまで付けた割にはわざわざ出さずとも良かったかな...と感じられたのが本作のZ要素の扱いとして残念なところでありました。単体劇場作品が作られなかったから色々盛り込んだ感じなのかもだけど、ぶっちゃけノイズになったところが多かった印象であったしうーんなんとも

 

 

という感じで、トリガーエピソードZの感想をつらつらと書き連ねさせていただきました。最後にちょっと良くなかった点を色々述べはしたものの、ティガを踏襲した作品であるというところまで踏まえた上でのトリガーのテーマ性への別側面からのアプローチはとても面白かったし、そこから成された話もとても楽しめるものだったので、その点は非常に満足。総じて「勿体無い作品」であり、良きところも悪いところも併せてトリガーらしい感じだったというのが総評かなと。トリガー好きな方にはとても良き一作だったと思います。

まぁ何はともあれ、トリガーの物語の総決算、味わえて本当に良かったです。ありがとう

ED後に出てきた「アレ(話すと長くなりそうなのでここでは割愛)」も含め、あの世界の物語はまだまだ広がっていきそうなので、その辺は楽しみにしていきたいところです

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた