AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

慈愛の勇者

ウルトラマンコスモス 総括

 

 

一瞬にして街を破壊した謎の光が、巨鳥リドリアスに取り憑き凶暴化させた。宇宙開発センターのパイロット候補生ムサシはリドリアス保護の為街へと向かい、ウルトラマンコスモスに出会う。これを契機にムサシはTEAM EYESに入隊、怪獣保護という理想に向かい奮闘する。


 ※ TSUBURAYA STATION-作品-ウルトラマンコスモス より抜粋

 

ウルトラマンコスモス - 作品 - 円谷ステーション

 

2001年、ウルトラシリーズ35周年および円谷英二生誕100周年のアニバーサリーイヤーとなったこの年に堂々登場した21世紀最初のウルトラシリーズ作品ウルトラマンコスモス

初代ウルトラマンを思わせるコスモスのデザインやQ・初代に登場した怪獣達のオマージュキャラ登場など原典回帰を意識させる要素を節々に仕込みつつも、メインテーマに「怪獣/宇宙人(未知なる存在)との共存共栄の実現」を掲げ、怪獣の保護・救出を中心とした展開が主に描かれるという、怪獣や宇宙人との大迫力の戦いが見所であった従来のシリーズから大きく転換してきた異色さを最大の見所として打ち出してきた作品であり、その作風からウルトラシリーズのファンを中心に賛否を大きく分けたこともあった一方、魅力的なキャラクター達の人間ドラマと共に織り成される「愛」や「優しさ」という要素に主軸を置いた深みある作劇や、全65話というシリーズ屈指の長編構成故のバラエティ豊かなエピソードの数々見応えある特撮映像などの様々な独自の魅力によって今なお根強いファンを多く有する本作でありますが、昨年の2021年5月13日に20周年を記念した週2話ごとの全話youtube配信が行われ、私も久方ぶりの視聴を楽しませていただきました。当時5歳だった私が初めてリアルタイム視聴したウルトラシリーズということで非常に思い出深い作品なんですよね 夕方にテレビの前で楽しんで観ていたのが思い出される...しっかり観るのは5年ほど前にTSUTAYAでちびちびレンタルしながら観た以来でしたが、リアルタイム当時の記憶を掘り掘りしつつ、感想を書いてみることを考えながら当時はあまりじっくり掘り下げなかったポイントなんかにも注目して視聴すると、更なる魅力の発見にも繋がってとても楽しかったですね。

というわけで前置きが少々長くなりましたが、今回はそんなウルトラマンコスモスの全話視聴後の総括をしようと思います。記念すべき放送開始日の7/7に投稿だぜ ほんとは昨年末の最終回配信後色々と忙しくて総括記事を書くタイミングを逸してただけであり、このタイミングにテイ良く投稿したろと思い立っただけです すまない(

長くなるかと思いますが是非お付き合いいただければ。

 

 

本作の魅力として第一に挙げられるのはやはり上記の前置きの部分でも触れた通り、「愛」「優しさ」をメインテーマに据え、怪獣をはじめとした「未知の存在との共存共栄の実現」を目指していった全体のストーリーにあったなと感じます。怪獣や宇宙人をはじめとした規格外の生命体や異邦人に相対し、時に衝突し時にすれ違いながらもその心を理解し、手を取り寄り添おうとする融和の精神そこに根付く他者を想う優しさやそれを貫き通す強さ、どんな困難を前にしようとも自身の気持ちや想いを信じ一歩踏み出していく勇気、それらを全体通して真っ直ぐに描いたストーリー中に滲む尊き精神性こそがコスモスの最大の魅力でしたね。ウルトラシリーズでも単発エピソードとして同じ趣の話は何度も描かれてるけど、カオスヘッダーという巨大な敵との幾度もの対峙を経る中で、果てのない戦いの虚しさやカオスヘッダーという存在の本質・その心に想いを馳せ、最後には手を取り合うまでに至る、という壮大なスペクタクルを築き上げてみせたところを筆頭として、作品全体を支える柱たらしめてきたのはウルトラシリーズとしてはとても革新的だったなと。どれだけ頑張ろうともここぞで越えられない非情な現実の壁、取り返しのつかない悲しい結末、何かを想い感情的になる余りふと他に何かを顧みない姿勢を取ってしまう失敗、といった困難や挫折を時に容赦なく描きつつも、それでもひたむきに前を向き信じた夢に向かって進み続ける、青臭く泥臭くも輝く意志にこそ意味を見出し魅せてくるところも非常にグッとくるところでしたね。清濁をしっかり併せ呑むところまで含めて、どこまでも作品のテーマに真摯であったという印象ですね

加えて全65話というウルトラシリーズ屈指の長期スパンであったことを活かし、バラエティ豊かなエピソードが数多く作られ、作品のテーマ性が多角的なアプローチからより強く補強されていたのも実に良かったところ。野生動物の保護や駆除、人間のエゴなどといった現実世界においても幅広く深く当てはまり得るテーマを各エピソードにかなり解像度高めに落とし込み掘り下げることで、他者・他の生物との共存という命題について視聴者により感じ入るものがあるよう話を組んでいたり、その一方で得体の知れない存在とも手を取り合い同じ場所で共に支え合う生きる心優しい人々の善性が光る様を描いたり、果ては子供のゲストキャラを中心に据え、彼らが不思議な出会いと交流を経て友情を築いて成長していき、友情を育んだ者達ともう一度手を取り合うため見果てぬ夢に向け踏み出すという、夢を真っ直ぐに信じ進むことのできる若者達の可能性に希望を見出し未来への道筋としてみせたりと、メインテーマを突き詰められるだけとことん突き詰めるべくしっかりとあらゆる面から見つめ、豊富なエピソード数を活かして重厚に組み上げた繊細且つ綿密な話作りは見事であったなと改めて視聴し深く感心しましたね。この辺はほんと各エピソードごとに強く掘り下げられているので、詳細は是非各話感想で見ていただきたいところでありますが、それらが作品全体通しての作劇やテーマ性の貫徹にいっそうの説得力を与えていたのは間違いないし、やはり作品とはストーリー上での多層的な積み重なりにも大きな意味が出来上がるものでもあるので、本作はそこをしっかり為したのが素晴らしかったなと改めて。

 

またそんなコスモスのストーリーにいっそうの重厚さを与えた要素としてこれまた欠かせないのが、主人公ムサシを筆頭とした個性ある多彩なキャラクター達、および彼らが緻密に絡み合い織り成すドラマであったなと。怪獣と共に生きる未来を夢見て、時に現実に打ちひしがれながらも諦めることなく理想を追うムサシの熱い姿がストーリーの一つの柱として作品を牽引するのは勿論のこと、ムサシと相棒たる関係になっていくフブキ隊員をはじめとして、TEAM EYESの面々が諦めず奇跡を起こそうとするムサシの信念に感化され、共に自分達の力で理想を成すべく、諦めず困難に立ち向かっていく想いを築いていく様は胸を打つし、逆に「命」を守ることにおいて強い責任感を持ち、現実にも真摯に向き合う大人としての視点を持つヒウラキャップをはじめとした他のメンバーの姿勢が、未熟な面のあるムサシの成長にも繋がっていくという、メインキャラクター周りの相互の関係性により発展していくドラマを長いスパンでもって奥深くじっくりと描いていたのはやはり本作において非常に巧みなポイントでしたね。キャラクターそれぞれに軸となる背景やそれに基づく信念、伸び代があり、それが幾つも交わり余すことなく活かされてたのが凄く気持ち良かったです。

これはEYESの面々をはじめとしたメインキャラに限らず、準レギュラーキャラおよびゲストキャラも同様で、カワヤ医師やらヨシイちゃんなどのちょっとしたゲストキャラと思っていたキャラクターがその後も定期的に登場し濃いキャラ性でエピソードを盛り上げメインキャラをグッと深めてきていたし、単発エピ単位でもゲストキャラの厚みあるドラマが縦軸横軸両面で作品を引き締めていたしと、キャラ関連の細かな作劇が随所で光っていたのも良きところでしたね。そこにおいてはやっぱり全65話という話数の多さもとても良い方向に働いてたなと思うところで、その話数の多さ故に単発エピ・連続エピ両面でのサブキャラの再活用みたいなことがしやすくて他のキャラとの絡みも惜しげもなくやれたからこそ、EYESメンバー全員分の色恋関連の話を入れ込むというご機嫌極まりない自由な作劇も入れ込めて作品全体の人間ドラマもググッと引き締まったよなと思います。

 

といった感じで、テーマ性の掘り下げの真摯さ、およびそれに掛かるストーリー面の盛り上げの丁寧さが非常に強いのがコスモスの魅力だなと感じるところですが、それに負けないくらいSF特撮ヒーロードラマとしての特撮・アクションの見応えがあったのも素晴らしかったポイント。直近作であるティガダイナガイアで培った迫力・外連味の創出のノウハウを所々に手堅く入れ込んでいるのに加え、モードチェンジ時の体色やフォルムの変化を演出する滑らかなCGに技術のパワーアップを見せつけていたり、各モードのアクションに個性あるモーションやポージングを加えることでコスモスのキャラ性を戦闘の中でもしっかりと印象付ける工夫をしていたりと、更に発展した魅せが全体に感じられるものになっていたのが非常に良かったですね。ルナモードコロナモードエクリプスモード、という三段階のモードチェンジも、段階的なパワーアップのような側面がありつつも、それぞれの出来ること・見せ場がしっかり区分されているある種並列形態的な側面もある、というティガダイナガイアのタイプチェンジを上手いこと折衷させた新しい魅せの形という感じなので、この辺の見せ方の工夫は本当に上手い。3形態とも終盤までなんだかんだでそれぞれコンスタントに見せ場があってどれも霞まなかったのは流石よね

怪獣や宇宙人と言った相手方の魅せに関しても、時に威圧感高めに、時に悪辣に、時に穏やかに、時にコミカルに、とウルトラシリーズらしく個性豊かなキャラが続々登場する中でそれらの個性を演出やアクターさんの動き込みでしっかりと描き分けて印象付けていたのが見事でしたし、メカニック面もEYESのテックサンダー・テックブースター、防衛軍のベンガルズ戦車部隊をはじめとした様々なメカが操演・ミニチュア・CGと色々な手法で存分にカッコよく演出されていたしと、主役たるウルトラマンを取り巻く要素の数々も負けず劣らず抜群の存在感を発揮していたのがとても良く、総じてウルトラシリーズの古き良き魅力を惜しげもない新たな魅せで存分に彩った満足度の高い特撮であったなと感じますね。

 

という感じで様々な部分の魅力を取り上げましたが、縦軸横軸共に高クオリティな水準で描かれてきた、バラエティ豊かで骨太なエピソード群という部分についても、それらの魅力を支えた重要な骨子として挙げなくてはならないでしょう。怪獣保護・カオスヘッダーとの対峙といった強固な縦軸エピソードを綿密にしっかりと描き上げつつも、それに並行して多種多様な味わいの横軸エピソードの数々の創出も抜かりなく、とこの部分がとてもがっしりとしていたからこそ、キャラ・ドラマ面は非常に面白かったし、特撮面でも様々な見せ場が用意できたと思うので、コスモスという作品のある意味欠かせぬ肝だよなぁと。ウルトラシリーズといえばバラエティ豊かな横軸の広さに魅力アリ、的な考えが個人的にはあるのですが、本作は文句無しですよ 何度も言っちゃうけどやっぱり全65話というボリュームがあったからこそよね それを中弛みなくきちっと活かし切った製作陣の構成力・クリエイティビティも見事であった

 

 

以上、コスモス総括でありました。今までの総括記事に比べるとなるたけコンパクトにまとまったかな?という感じですが、しっかり本作の魅力を詰め込めたかなと

取り上げた独自のテーマに恐れることなく切り込みどこまでも真摯に向き合い掘り下げたことで際立つ個性を磨き上げた意欲作、ウルトラシリーズという一大シリーズに一つの革新をもたらした作品でありつつも、それだけに留まらずウルトラシリーズならではの妙味もしっかりと押さえ、新しい魅せを積極的に取り入れる形で更に魅力的に仕上げてきた、アニバーサリーに相応しい温故知新のリスペクト作でもある、という非常に奥深い一作であったなと強く感じることのできた良い総括になりましたね。昨年の配信を通じての改めての全話視聴と併せ、更にコスモスを深く知り、迫ることができたと思います

これにてコスモス関連のレビューには一区切りという感じにはなりますが、劇場版の方がまだまだ残ってもおりますので、気が向いたらそちらの方も改めて視聴・レビューできたらなと思っております まぁまだ未定なのでぼちぼちと待っていただければ。忘れた頃にふっと記事が上がったりしたら是非読んでくださいね

最後に素晴らしい作品を作り上げられた製作陣・キャストの皆様に今一度の感謝を。ありがとうございました!これからもコスモスは永遠です

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた

 

 

夢を追いかけて

全てが変わる

 

いつだって君を

心は見ている

 

愛はどこにある

その答えから

 

君だけの勇気

必ず

探し出せるさ