AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

絵が映し出す「心」

変な絵(著:雨穴)

感想レビュー

 

 

子供たちは、大人の話ではなく、大人のあり方によって教えられる。

...カール・グスタフユング

 

雨穴ミステリー、第2弾ッッッ!!

30万部の大ヒットを飛ばし映画化も決定された第1弾「変な家」に続き、独特の世界観と存在感が特徴の怪しい仮面と黒タイツのウェブライター・ホラー作家・youtuberの雨穴さんが送り出してきたミステリーホラー小説第2弾「変な絵」、私もこの度読了致しました。youtubeやオモコロ公式サイトに投稿しているオリジナルのミステリーホラーストーリーの数々やストーリー原案を担当されているドラマ「何かおかしい」のエピソードなど、数多の良作に毎度毎度大いに楽しませてもらったいる身なので今回の新作書籍発売にも非常に胸高鳴っておりましたが、いやはや期待を裏切らない名作でしたね...読み進めるごとにグイグイ引き込まれ、3時間弱ほどかかりましたが買ったその日に一気に読み切っちゃいました 流石の雨穴さん...

今回はその感想についてぽつぽつと語っていこうと思います。一応未読勢にも向けて薦めるような形で書くので直接的なネタバレ等は無しにして語るようにはしていますが、色々と語る関係上大まかな物語のあらすじやストーリー構成、見所(について仄めかす程度の印象語り)などソフトに内容に触れる記述自体はちらほら入れてるので、サラで読みたい方などはそこだけご注意を。どうぞよろしくお願いします

 

家が紐解く“闇” - AnDrew’s小生意気レビュー記

↑以前投稿した雨穴さんのミステリー小説第1作目「変な家」の感想レビュー記事リンク。こちらも併せてどうぞ(記事内に「変な家」書籍のAmazonリンクも貼ってます)

 

【100万回再生突破!】何かおかしい 第1話(公式) 濱正悟 リアルタイム進行型ヒューマンホラー・サスペンス【先行配信】 - YouTube

【先行配信】第1話 てるてる坊主「何かおかしい2」#雨穴 怖いけど見逃せない、ヒューマンサスペンス【公式】 - YouTube

↑雨穴さん原案のミステリードラマ「何かおかしい」「何かおかしい2」の各第1話リンク。サクッと見やすく適度にゾクッとくるサスペンスストーリーが面白い良作です。それぞれ何話かはYoutubeで無料公開中、Paraviで1期は全話配信中、2期は順次更新中です。是非どうぞ

 

【ミステリー】人形に録音された、子供の声の謎 - YouTube

人形に録音された、知らない子供の声の謎 | オモコロ

【最後の5分ですべてがひっくりかえる】差出人不明の仕送り - YouTube

差出人不明の仕送り | オモコロ

↑オリジナルストーリー「人形に録音された、知らない子供の声の謎」「差出人不明の仕送り」のそれぞれYouTubeおよびオモコロ公式サイトに投稿されたもののリンク。動画の方は約1時間のボリューム感ある大作ですが、伏線回収や展開運びがしっかりと纏まった良質なミステリー展開と人間ドラマが見応えある作品でオススメ。文章形式の方でじっくり味わうこともできるので是非

 

 

てなわけで早速感想へ。

本作もこれまでの雨穴ミステリーの例に漏れず、秀逸なストーリー構成と伏線配置・回収により織り成された骨太なミステリー展開、その中で繰り広げられる闇も多分に含んだ人間描写が大きな魅力となっていましたが、本作はそれに加えて今までと一味違い、各章ごとに複数の年代・複数の主要人物がそれぞれ軸となって展開していく群像劇的構成、およびそのそれぞれの物語の中で展開される数々の謎が最終的に繋がり一つに集約され壮大な物語を成していく大河的な文脈構築にかなり力が入っていたのが最大の魅力。これにより前作「変な家」をも上回るボリューム感と読み応えが生まれていたのが実に素晴らしいところでありましたね。

本作のストーリーはざっくりと、謎めいたブログの真相についてある大学生達が紐解いていく第1章とある家族を取り巻く不可思議な事象をじわじわと増していくサスペンス感溢れるタッチで描く第2章とある殺人事件の謎とその真実に1人の若者が迫っていくミステリーテイスト濃いめの第3章全ての物語が集約していくクライマックスの最終章、という感じで異なる時系列と登場人物に基づく複数軸を並行させて描きつつ少しずつまとめ上げていく構成されているのですが、この各章ごとのストーリーの密度と完成度が凄く高いのがまず面白いポイント。各章ごとに登場する多数のキャラクターやそれを取り巻く人間関係が非常に緻密に作り込まれそれらが個別で非常に重厚なストーリーを織り成しているので、各章をそれぞれ切り取って個別で読んでも一つ一つが別々のミステリー小説の一パートとして普通に楽しめてしまうくらいに重厚で読み応えがあるんですよね。第1〜3章までの流れは一冊の中で色んな物語に触れられる、さながらオムニバスミステリー的な満足感が凄く高くてここはとても楽しかったです。

そんな各章の時系列や場面、登場人物達の関係性が盛り上がってきたここぞのところでガラッと変わりまた新しいストーリーが展開されていく目まぐるしいテンポ感には少し押される面はあるものの、そこで光るのが雨穴さんの巧みな伏線配置と回収が張り巡らされた展開運び。本作、冗談抜きにど頭のパートからクライマックスまで重大な伏線やキーワードがこれでもかと配置されていて、物語を読み進めていく中でふっと出てきたワードや構図に「あれ?これって...」と見覚えを感じて前の章をちらと読み返してみると思わぬリンクがあって目を見開く、といったことが読んでる最中に急にバチコンと叩き込まれてくるので、並列していて一見交わらなさそうな各章ごとの重厚なストーリーを楽しみつつも、その中でふと浮かび上がってくる各章の接続の発見に脳に電流が迸るかのようなカタルシスを味わえるめちゃくちゃオイシイ構成になっており、ここでグイグイ引き込まれていくのが凄く良き。マジに注意深く読む人やふと出たフレーズとかを覚えてて引き出せる人ほど膝を打つようになってるので、そうでない人も是非メモとかを用意しながらちょっとしたワードとかも細かく書き留めたりしながら読んで欲しいな、と思ってしまうほどですね...相変わらず雨穴さんの巧妙なミステリーの組み立てとそれをストーリーとしてガッチリ成立させる文章力は凄い

 

またそんな重厚なミステリーをより深みある形に引き立てているポイントたる、人間の内面にグッと切り込み清濁共に深みある形で描き上げる人間描写を軸にしたドラマ面も本作の魅力として欠かせないところ。子供の少しずつ自我が形成され始めている未発達な自我数々の辛苦を味わって擦れながらも何かが燻っている大人の心情など、文字通り老若男女数々の登場人物の内面をそれぞれの背景や信条に基づく形で繊細なタッチの基描いた文章には時に感情移入しながら引き込まれるし、それが上述のミステリー部分と緻密に絡み合って「何故そのようなことが起こったのか?」「何故その人物はそのようなことをしたのか?」等がくっきりとしたディテールを生み出しているしと、本作の読み応えを一段階、二段階とグッと引き上げているのはこの人物描写といっても過言ではないでしょう。個人的に雨穴さんのミステリーパートにおけるトリックや謎解きの構成自体は、ガチガチのロジックでまとめてあるというよりも難解めな謎を組み立てておいてそれを少々の強引さも交えながら紐解いていく(ここは各作品においても「あくまで推測」等のワードを交えることがあるので多少意識してるとこだとは思う)って感じのテイストでもあるというのが個人的な印象なんだけど、雨穴さんが巧みで凄いのは、そこに繊細且つ緻密な登場人物の内面描写や背景をグッと入れ込むことで相応の納得というか説得力を与えてるところだと思ってるので、本作はその巧みさが凄く強力に発揮されていたなぁという感じでしたね。人間のこういう感情があるからこそこういう事象は発生し得た/実際に発生した、というところに軸足を置いて読み手をストーリーに引き込むのが雨穴ミステリーの妙味だよなと。

いやほんと本作の人物描写面/ドラマ面は、過去の雨穴さん作品の数々のどれをとってもトップクラスだったなと感じるくらいにレベルの高いもので、純粋に一つの人間ドラマとして見応えがありすぎるんですよね(本作の場合はいくつもの人間ドラマが絡み会う群像劇的な部分も魅力だし)。「あまりに業の深い、しかし切実で物悲しい愛の物語」とでも形容される、黒く深みあるストーリーには引き込まれること請け合い。ここでは敢えて多くを語らないので是非読んでいただきたいですね

一方で本作は、今までの雨穴ミステリーとは少々一味違うオチになっていたのも面白かったところであったなと。雨穴ミステリーといえば後味の悪さを残してパタンと終わる良い意味でのぶつ切り感、それ故のゾクっと感が(ヒューマン)ホラー作品として面白かったのですが、そこに一つ変化球をぶち込んできたなぁという感じでしたね。勿論えげつないまでの後味の悪さとかは残されるんだけど、ああいうタイプのオチはほんとに珍しかったし良いアクセント まぁ本作はあまりにも救われないことが多かったし、あのオチくらいは許されるよね...

あと雨穴さんの公式アカウントでも語られてたように、雨穴さんの作品だとお馴染みの栗原さんの学生時代が描かれるのも本作の見所でありましたが、栗原さんは昔から栗原さんだったんだなぁと、なんか謎の安心感がありました。w あの清々しさすらある少々のズケズケ感とちょっとズレたところは今も昔も健在であった() 一方で栗原さんの良いところが窺える場面もあったりして、彼についてより深く知れたのがまた良き。ほんと魅力ある良いキャラクターよ栗原さん

 

 

以上、「変な絵」の感想でした。ミステリー面の緻密さ、ストーリー面の重厚さ、人物描写面の奥深さ、全てが巧妙に絡み合い面白さと昇華された実に読み応え抜群のヒューマンドラマ/ミステリー小説でしたね。ネタバレは避けたけど色々語ったしここではもう多くを語るまいとしますが、興味を持っていただけたならばご一読を。下に書籍のリンクを貼っておきますので是非に。超オススメです

 

Amazonのリンクです。再三推しちゃいますがマジに素晴らしい一作なので、ご興味を少しでも抱かれたら是非。

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた