AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

戦士の魂、宇宙を往く

ウルトラマンティガ

第4話「サ・ヨ・ナ・ラ地球」

感想レビュー

 

 

祝☆墜落コンビ初墜落

ウルトラマンティガの風物詩・ダイゴとシンジョウ隊員のガッツウイング墜落コンビの伝説がここから始まります 刮目しろ凡夫ども!! こんな初っ端の回からなんだ...って思ったのは内緒な

 

皆様あけましておめでとうございます。2023年も何卒よろしくお願い致します。これからも色んな作品の感想を思うままに書き綴り、色んな方と想いを共有できるブログを心がけていきますのでもし良ければどうぞお付き合いをば

 

てなわけで前置きは程々にして早速感想へ。新年一発目だし名作エピの感想で景気良く飾ったろうやないけ!ということで今回はウルトラマンティガ序盤傑作群の一角、「サ・ヨ・ナ・ラ地球」の感想レビューになります。怪獣出現→正体解明→対処というオーソドックスなウルトラシリーズの単発エピソードらしい流れを軸としつつ、ほんのりとしたビターな展開の中に人間讃歌とSFテイストな希望が光るストーリーを約25分の中で劇的に描き上げた言わずと知れた名エピ、年明けに相応しい一作でありましたね スパークレンスを体の前でクロスしてから掲げるあのカッコよい変身ポーズもこの回での登場なのでそこにおいても印象深い  あの変身ポーズでの変身からの「Brave love,tiga」をバックにしてのティガの登場という一連の演出が反則級にボルテージがぶち上がるんすよね... 

 

そんな今回のエピソードは、探査船ジュピター3号とその乗組員の消息不明が語られる導入から始まり、突如として怪獣リガトロンが文字通り脳天から海面に飛来、その周辺にジュピター3号の乗組員達の影がちらつき始める...というジュピター3号とリガトロンを取り巻く謎の解明を描く前半パートから話が展開。TPCの防衛システムをコンピューター内部から突き崩してきたリガトロンの謎めいた力が猛威を振るい、その力の正体が冒頭で語られた消息不明のジュピター3号の乗組員に通ずるものであると示唆される、という描写でリガトロンの正体に不穏なものを感じさせてくるところから、リガトロンの出現に合わせるかのように親族の元に幽霊の如く突如現れ出る乗組員達地球へ届けられていたエザキ博士のメッセージが物語るジュピター3号失踪の真実、といったその不穏さへの答え合わせの描写が次々に突きつけられてくるという多段的な構成の魅せがシンプルながらもゾクリとくる、良きSFミステリーテイストに仕上がっているのがとても目を惹くところでありますね。これを冒頭の10分行くか行かないかの中に納め描いてる小気味良さがグッド  寝たきりのおばあちゃんの手を握ったりまだ幼い息子とサッカーをしたりと大切な家族の下にほんの一時でも現れ出たり、ジュピター3号が取り込まれんとしている中でも必死に抵抗しようとしていたことが描かれたりと乗組員達の人間的な情や気高さみたいなものが叙情的に描かれ心揺さぶるが故に、彼らが人類に牙を剥く異なるものと化して地球へ飛来してきた無情さ、彼らを人類に害なすものと見て戦わなければならない無慈悲さが「彼らと戦わなければならないのか」というシンジョウ隊員の悲痛な訴えも相まっていっそう際立つという辛さがまたクるんだよな...

 

また細かいところではあるけど、この辺りのストーリー展開の中に「シンジョウ隊員のアストロノーツ設定」TPCの宇宙開発局という部署の存在」といった細かい設定周りを自然に落とし込んでキャラクターや世界観設定の掘り下げとしていた巧みさも本エピソードで好きなところ。シンジョウ隊員のアストロノーツ設定を「同業の仲間への思い入れ」として本エピのジュピター3号周りの人間描写に絡め引き立てたりと、こういう細かい部分をしっかりストーリーに接続させて描くことで作品全体のディテールとエピソード単一のクオリティの両方をグッと引き上げる作劇は見てて気持ち良いすね

 

そして後半は再び出現したリガトロンとの戦闘。リガトロン、無機質さと生物感の同居したディテールや単眼等のデザインが目を惹くビジュアルの不気味さがジュピター3号の真相の解明と合わせて強まっていくというストーリー展開も込みでの濃い存在感(発光体と融合したジュピター3号がモーフィングしていくシーンのインパクトと合わせて「怪獣化した宇宙船」としての説得力が凄く高いデザインしてるのが良いよね)が凄く印象深い怪獣だけど、その上でティガをも圧倒する強豪怪獣してるというのがなお強烈で良いよね  この後のストーリー展開も踏まえれば強くてなんぼであるとはいえ、序盤からこの水準の怪獣出てくるのなかなか飛ばしてんなと今にして思う(初っ端タッグ怪獣、多芸怪獣、割とタイマンいける烏滸がましい怪人、とティガ序盤の敵そこそこ強めなの多いよなと)

また完全な余談ではあるけどこのリガトロン、他の生命体との同化や宇宙へ進出してきた者への敵意というところで、次作ダイナに登場する敵性生命体・スフィアに関連する怪獣なのでは、とファン間で考察されてるのが何気に面白いところだよなと。世界観の共通性的にもこの時代から出張ってきてたとしてもおかしくは無いし、単眼にあたる発光体も一部のスフィア合成獣と共通してるし、公式的な繋がりは無いにしても、もしかしたら...と妄想するのは楽しいよね(宇宙に進出してきた人類に牙を剥くべくリガトロンを尖兵として送り込んだけど、取り込んだ人間の感情という不確定な事象が原因でリガトロンが敗北したことで警戒を強め一時撤退、「感情ある生命体との同化」をナシとした上で体制を整えて人類が更なる宇宙進出を果たしたタイミングで今一度襲来...なんていう妄想)

 

そんなリガトロンの猛威に対し、シンジョウ隊員の一声による作戦をきっかけに覚醒したジュピター3号の乗組員達の意志が歯止めをかけ、逆転へ導く展開は文句無しに今回のハイライトであり実に胸が熱くなるところ。不条理な存在に飲み込まれ人でなくなった乗組員達が、かけがえのない存在にして彼らが人間であったことの象徴である「家族」のことを強く思い起こして人間としての意志と活力を今一度目覚めさせ、それによって不条理に抗い打ち克つ様はまさしく「人間」の生きる力と勇気を描く“人間讃歌”であり、これがウルトラマン含めた超常の存在がその威容を示す中でなお光り輝く「人間の意志/強さ」を美しく描くウルトラシリーズの作風ともガチッとマッチしてもう、凄まじく沁みるんですよね...前述の家族の下へ現れ出た乗組員達の描写、どんな形になろうとも大切な存在の下へもう一度赴いた彼らの人間としての心が滲む描写があったからこそ、「家族」の存在がここで彼らを目覚めさせるトリガーとなる説得力を強く伴うという構成も鮮やか  加えて後のエピソードにおいても幾度も涙腺をバチバチに破壊してくる名BGM「Love Theme from TIGA(TAKE ME HIGHERのアレンジver)」のしっとりとしたメロディがバチッとマッチして琴線に触れまくってくるのがまた、たまらん

そしてここのシーンを語る上で欠かせないのが、何と言っても本エピの主役たるシンジョウ隊員の感情溢れるカットの数々だよなと。同じアストロノーツとしてジュピター3号の乗組員達の身を案じ、また同時に彼らの安否を想い不安になる家族の心を慮るからこそ、その周囲に土足で踏み込み嗅ぎ回る宇宙開発局のやり方に憤り、「人間らしい優しさや思いやり」が削られていっているようだと消沈する感受性豊かな熱血漢としての姿が前半の展開において繊細に描かれた彼が、後半のリガトロン戦において乗組員達の「人間としての意志や心」を信じ、「もう一度...もう一度人間として生きるんだ!!」と必死に呼びかけたことで前述の逆転を導くという、彼を軸とした人間描写がすげー熱いんですよねぇ 乗組員達のなれ果てであるリガトロンを単に怪獣/人類の脅威と見て戦うことに思うところを見せ続けたシンジョウ隊員だったからこそ最後に乗組員達の心に呼びかけることを思いつけたんだろうと感じられるし、どこまでも泥臭くひたむきに人間の善性を信じた彼の真っ直ぐさが本当に眩しく光ってたのが素敵 シンジョウ隊員は今後もこういう真っ直ぐで熱い展開を沢山見せてくれるからね...大好きだわ

 

かくしてリガトロンは撃破され、人間を超えた光のような新たな生命体としてそこから解放された乗組員達の旅立ちをGUTSの面々が見送る、というシーンで締めとなりました。生命体としては「人間」の彼らは死んでしまったけれど、シンジョウ隊員の呼びかけや大切な家族の存在があったからこそ彼らの「人間」としての意志は残り、新たな生命となってかつて目指した宇宙の果てをまた目指し続けるのだ、という決してハッピーエンドではないけど希望のある絶妙な締め括りを、程良いSFテイストを乗せる形でしっとりと描き上げたこのオチ、良いですよね  彼らが最後人間であったことをたしかに見届けていて、同じアストロノーツとして彼らが目指す場所や夢を理解しているシンジョウ隊員がそっと彼らの旅立ちを肯定し後押しするというほのかな優しさも好き 「サ・ヨ・ナ・ラ地球」とサブタイで言ってる以上、彼らの旅路はきっと遥か遠く、今を生きてる人間にとって途方もない果て無きものになるんだろうけど、家族の下に僅かばかりながらも現れた時のようにまたほんの一時だけでも大切な人達の下に現れたりもしてると良いな、とか、時代が進んだ先で彼らの家族、でなくとも子孫達が彼らの後を追って宇宙へ進み再会したりとかしないかな、とか色々妄想もしちゃう

 

しかしこうして改めての視聴をしててふと気付いたけど、本エピって初代ウルトラマンの問題作として有名な「故郷は地球」との対比と捉えられる部分も多い話だよなぁ、とも思ったり。ストーリーライン自体や諸々の設定、テーマとかはまた全然違うんだけど、人間が変化してしまった怪獣、その怪獣と本当に戦わなければならないのかという苦悩、といった部分がある種の共通性として軸になった上で、「人間らしい心は失くしてしまったのか」というイデ隊員の呼びかけをもってしても止まらなかった(止まれなかった)ジャミラが故郷・地球で怪獣として死してしまった「故郷は地球」に対し、本エピは「もう一度人間として生きるんだ」というシンジョウ隊員の呼びかけで人間としての心を目覚めさせた乗組員達が再び人間としての夢を抱き宇宙へと旅立っていくという最後になってる、という形である種対比された描写がされているとも取れるので、もしかしたらあの悲劇的な結末のif(?)的な形で意識された面もあったりしたのかもな、なんて(サブタイトル自体も各エピの結末を象徴するかのように「故郷は地球」「サ・ヨ・ナ・ラ地球」で対になってるように思えるしね)  まとりあえずこちらはあくまで余談ということで。

 

 

以上、ティガ第4話でした。記事冒頭でも語った通り、SF特撮ならではのハードさやビターさはありつつも、同様にSF特撮だからこそ醸せる人間讃歌や希望が光るストーリーがとても心を打つ名エピソードであったなと。ストーリーを引き立てる自然な設定周りの落とし込みやシンジョウ隊員を主役とした熱く沁みる人間描写など、各部の描写も非常に小気味良くやはり本作序盤を牽引する傑作回の一つだなと改めて実感しましたね。最高であった

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた