AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

デスガリアンのお方ですか?

ウルトラマンティガ

第14話「放たれた標的」

感想レビュー

 

 

今回のエピソード、街並みの描写の中になんかやたら近未来的なデザインのタワーや連絡通路が映ったカットが一回だけしれっと映されてる(アバンタイトルの約1分後、ホリイ隊員とシンジョウ隊員が「早速調査や」「おう」って言ってガッツウイング飛ばしてるシーンの次のカット)んだけど、これ何気にティガの近未来設定(放送当時の現実世界の年代である1996年に対し、ティガ本編はその約10年後のおおよそ2007年頃が舞台)を日常風景中においてSFチックな描写で表現してるめちゃくちゃ貴重なカットなのでは?とふと思った次第。GUTSやTPCの先端テクノロジー描写とかはまぁウルトラシリーズなんだし普通に描くもんなんだけど、ああいう街並みの日常風景に自然に近未来的な要素が含まれているカットはティガで描かれてた覚えが全然無かったないのでなんか妙に面食らったというかなんというか。こんな割とストレートな描き方してたんだな...
ちょっと他のエピにもこういうのあったかどうか気になったので、後のエピソードの視聴においても注意するようにしてみます あっても気付かないことがあるかもしれんので、知ってる方がおられたらあるよって是非教えてくださいまし 同じく「知らなかった...!」って方達はツブイマかお手元の円盤でチェックしてみてくらはい)

 

カプセルに乗って地球へ飛来した宇宙人の男女ザラとルシア、それはムザン星人が地球へと解き放った“狩り”、もとい“ゲーム”の標的だった...な大筋の話の今回のエピソード。前回のレイビーク星人から引き続いて星人系の敵が登場し、ドラマ面において怪獣登場エピとはまた違った緊迫感を醸した話となっていましたね。ティガの物語にもエイリアンが続々登場という流れになってきたなぁ キリエロイドやギランボは怪人系統だけど星人とはまたちょっと違う括りだし、サキはあくまで宇宙人のゲストキャラみたいな感じだったしで、敵キャラとしての星人はこの辺からが本格的な参入だったんだなと改めての視聴で気付いた

 

そんな今回のエピソードはムザン星人の標的となって逃げ惑うザラとルシア、特にザラのことを案じ不安を募らせるルシアを中心としたドラマシーンが強く目を惹くポイントとなっていました。両者とも基本的に人間の言語を話すことがなく身振り手振りや表情で感情や思考を表現する場面が非常に多かったため、ムザン星人に追跡されてる際の恐怖感攻撃を受け命の危機に晒されている際の緊迫感・臨場感そうした危機の中で相手を案じる焦燥や情愛が言葉を交える以上により真に迫って感じられるようになっていたのが演出として独特ながらも非常に秀逸で面白かったですね。その分無言の間の時間とかもけっこう多めで独特のテンポになってたのでそこがちょっと冗長だった面こそややあるものの、ここが徹底されていたからこそ縋るようにしてダイゴに自分の名をたどたどしく語るルシア今際の際にルシアの名を痛々しく呼ぶザラといった、2人が明確に言葉を発するシーンにこもった感情がいっそう引き立ったりとドラマ的な描写の深みが増しており、一エピソードのゲストキャラに過ぎない2人に僅かな描写の中でグッと感情移入できるようになってるのが巧かった。場面2人の関係性については劇中ではっきり明言されてるわけではないんだけど、どこにいるとも知れないザラに想いを馳せ自分の安全を投げ捨ててまでダイブハンガーを抜け出し彼に会おうとするルシアとか、命果てようという瞬間に最後に残す言葉がルシアの名前だったザラとか見てると、まぁつまりそういうことだったんだろうな...と十二分に察せられるのが辛い 結局2人とも地球に降り立ってから再会することすら叶わず命を落とし、知らない星の土に亡骸(と呼べるかも厳しいが...)を埋めることになったの救いがなさすぎるんだよなぁ

 

この2人の命を容赦なく屠った残忍な狩人・ムザン星人の不気味で冷徹な雰囲気もまた強く目を惹いたところでありました。他の生命体を狩りの標的/ゲームの駒として扱い、その命を躊躇いなく刈り取りあまつさえハンティングの成功を喜ぶかのように不気味な笑いのような鳴き声をじっとりと漏らす、といった、慈しみの感情などがあるとはお世辞にも言えない姿でもって「コイツはヤバい奴、許してはならない奴」と直感的に感じさせる様は凄く強烈だよなぁと。時代がもう20年ほど後だったらどこぞのデスガリアンのプレイヤーだったわよ  両者とも明確な言語をろくに介していないという前提が同じな中で、お互いに対する情愛を感じさせる姿を度々見せていたルシアとザラ上記の冷徹で残忍な振る舞いを見せつけ続けたムザン星人という対比が映像上でくっきり強調されており、直感的に「まぁつまりはそういうことなのだろう」と半ば確信的に察せられる構図となっているところは演出として実に巧み。ちなみにこの両者の関係性に関して、両者のどちらからも断定的な言及が無く(翻訳されたルシアの言も「我々は標的として銀河に放たれた」と明確な表現とは言い切れない)、ムザン星人がハンティングゲームとしてルシアとザラを追っていたというのも本編描写上だとあくまでダイゴが推測として語ったものでしかない、ということから両者の関係性が実はその限りではない可能性もあったのでは?」と見るファンの考察も実は僅かながらあったりしてて(ルシアとザラはなんらかの罪人でその罰として処刑人=ムザン星人に追われる恐怖を味わいながら処刑されることになっていた、など)、自分もあくまで一ファンの考察として一理ある部分もあるかもと思いながら興味深く読んだりもしたのですが、こうして演出として視聴者の直感的な理解を明確にするような対比が描かれているのを踏まえれば、実際のところはまぁその辺変に深読みせずとも疑わなくて良いんだろうなと改めて思った次第。まぁ身も蓋もない話公式設定でムザン星人はこういう奴ですって断定されてるしな!(後年のダイナにおいてもムザン星の代物に侵されたある人物がやべーことになってるという更なる裏付けのダブルパンチがあるし...) 以上余談でした。

てかムザン星人、人間大のジャケット着服胴体に異形の頭部を持った姿で淡々とザラ・ルシアを追跡する様子が不気味且つどこか生々しさもあるものとなっていて強烈なのも去ることながら、生気をあまり感じないガンギマリの目で標的を捉え追ってくる人間態の薄気味悪い威圧感も凄く印象深いんですよね。婆娑羅天明さんの無言の表情と佇まいの演技が強すぎんだわ...婆娑羅さんクウガでもドルドを演じられてたけど、こういう不気味なキャラの表現上手すぎるよな 192cmの長身も映像上はぱっと見分かりづらいけど視覚的な威圧感になってるんだろうな

 

そして終盤では、ザラとルシアの命を奪ったムザン星人への怒りに燃えるダイゴの変身したティガと怪獣の姿となったムザン星人の対決へ。某所で言われてたやつだけど、この回のティガの変身時のグングンカットの背景が普段の青色じゃなくて赤色になのが、ダイゴの怒りを反映させた象徴的な演出になってるっていうのが良いよね。ダイゴ自身ストーリーを通してルシアに対して守り抜きたい存在として深く入れ込んでいたから、彼女を目の前で失い守れなかったことへのやるせなさも相まって強い感情の爆発となるのがしっかり繋がってるし、視聴者としてもルシアに入れ込むような視聴感になってる人が多いと思うのでここでダイゴの怒りの変身にはかなり引き込まれるよなぁ フィニッシュのデラシウム光流も心なしか力がこもってるのがまた...

そんなティガと対峙した怪獣形態のムザン星人も何気にかなり強烈であったところ。レオの宇宙人を思わせる人間大の怪人形態からフォルムの大きく変容した怪獣形態への変貌(顔の特徴はかなり色濃く残してるから流石にレオ宇宙人ほどではないが)も凄く目を惹くけど、中でも一際インパクト大だったのはなんと言っても、首から腰にかけてがレール状に剥がれ、四足歩行の胴体の背中の後ろの方から蛇のように伸びた首が蠢いているという、あまりにも形容しがたい唯一無二すぎるフォルムへのチェンジだよなと。既存の生物の何にも寄らなさすぎで尚且つ今までの怪獣のフォルムとしても異例すぎるあの奇怪さはマジで初見だとビビり散らかしますよね...背中が剥がれて首長になるギミックの発動はまさにびっくり箱のそれで、視聴者に向けた驚きの演出も込めた「怪獣」の奇怪さの魅せという意味で、今でもウルトラ怪獣・宇宙人の造形の中でも飛び抜けて秀逸なやつの一つだよな...と思っちゃいますね 作り手としてもこれ思いついた時脳汁ドバドバだったろうなぁ  しかしこんな生物の進化としてめちゃくちゃに蛇行した道を突き進んでるようにしか見えない姿になってるムザン星人、一体どういう形でこれに至ったのかは凄く気になるな...首の長さは結局構造的に立った時の身長とそんな変わらんわけだからキリンみたいの高いところの餌を取るために〜とも思えないし、天敵に対する脅かし・威嚇のための進化という感じなのだろうか そもそもムザン星人の怪獣化・巨大化の能力自体もどういう感じのものなのか考察の余地が多いし(GUTSの攻撃で倒された瞬間魂が抜け出るかのような演出があって怪獣化したりと、一部の戦隊怪人よろしく死と同時に発動する不可逆の能力っぽさもあるのよな)、何気にとてつもなく奥が深いのかもしれない

 

かくしてムザン星人は打ち倒されたものの、ダイゴはザラとルシアを救えなかったことへの後悔を静かにこぼし、物語はやるせない救われなさの残る締めとなりました。せめて地球人として弔ってやろうと言う副隊長に、2人はそれを喜ぶのだろうかと返すダイゴが切ない...さっきの「ルシア達とムザン星人のどっちが〜」という話とはまた違うけど、ダイゴ達はルシアの感情とかを慮って察することこそしていたものの、結局最後まで完全なコミュニケーションを取るというところまでには至れていなかったわけで、それが最後の最後にて、この見ず知らずの星で命を狙われ死んだ彼らを『地球人』として弔うことが本当に彼らにとって望ましいことなのかどうか、ダイゴ達視点だとどう足掻いても完璧には分かりかねてしまう、というすれ違いに繋がるのがまた哀しい。「他種族や他生命体との相互理解」がエピソードのテーマになることも多いウルトラシリーズにおいて、ガゾートの話よろしく今回の話よろしく「すれ違い」がテーマの一つなエピが序盤にけっこう色々テイストを変えて描かれてるのこうして見るとなかなかハードだなぁティガ...(エボリュウの回に至っては人間同士のすれ違いだしなぁ)

 

 

以上、ティガ第14話でした。ムザン星人の残忍なゲームとその標的となり命を落とした異邦人ザラとルシアの死を様々な人間模様を交えて叙情的に描く話でありつつ、その根底には言葉や想いが交わり切らなかった哀しさがしっとり漂うという、切ないテイストの話でありました。さっきも言ったけど改めて観ると序盤からほんとハード続きだなぁティガ...ムザン星人のインパクトが怪獣好き的にもけっこう印象深い一エピでしたね

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた