AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

ゆかいなサーカス団とちいさな英雄

ウルトラマンティガ

第21話「出番だデバン!」

感想レビュー

 

 

ダイゴ「凄 い な ぁ ホ リ イ さ ...あーデバン!!

これほんとしれっと酷くて何度聞いても好き() 「俺こっちやて」

ここのダイゴ素で間違えたのか、それとも若干ジョークかましたのか、どっちなんだろう...雰囲気的には素っぽかったんだがw

 

魔神エノメナの邪悪な侵略、そんな中で光る小さく心優しき怪獣デバンとサーカス団の絆を描いたハートフルテイストのストーリーで魅せる今回のエピソード。ティガ怪獣代表格の一角たるデバンの登場エピ(ついでに後のエピソードで少し重要な立ち位置になるタンゴ博士もしれっと初登場)として印象深いのもさることながら、軽快なコミカルさや胸打つ熱い人間描写を随所に織り込んだ繊細なタッチで強く惹きつけてくるストーリーに定評のある平成ウルトラシリーズお馴染みの脚本家・太田愛さんのティガ初登板回というところでも強く目を惹く一エピソードですね。小さい頃家にあったティガの円盤に収録されててよく観てたのもありけっこう好きな回の一つなんだけど、太田愛さん脚本だったの割かし最近知ってちょっと驚きましたわね 自ずと刺さるもんだなぁ

ちなみに太田愛さん、ティガ初登板とは言ったけどそもそもこのエピソードがウルトラシリーズデビューどころかテレビ脚本家としてのデビューだったとのこと。テレビシリーズ一発目にしてこれとかいきなり頭角を現しすぎていないか...!?

 

しかし改めて今回のエピ観て思ったけど、やっぱり太田愛さんは人間描写、というかキャラ造形を深掘りしながらのドラマの描き方が抜群にうめぇなぁと今一度思った次第。今回の主役のデバンやサーカス団の面々の描写は勿論のこと、出動先の遊園地で漫才よろしく仲良くどつき合うシンジョウ隊員とホリイ隊員の掛け合い怪我して手当してもらってたのに手当てしてたヤズミ隊員が行っちゃって「えっおい、ちょっとこれ...」みたいなリアクションしちゃう(そして近くのレナにそっと代わりを頼むけど気付かれずスルーされる)シンジョウ隊員のシュールな一幕といったGUTSのみんなの関係性が窺い知れるゆるゆるとしたコミカルなやり取りや、ここ最近ちょくちょく垣間見せている「前線への出動」への意欲を窺わせたヤズミ隊員の「僕をデバンと一緒に行かせてください!」の台詞のような個のキャラの心情に触れる描写など、レギュラーキャラであるGUTSの面々のキャラ性や関係性にさり気なくもより深みや奥行きを与えた何気ない描写が今回のエピソード、ひいては作品全体をグッと引き締めてて良いんですよね(シンジョウ隊員とホリイ隊員のどつき合いが第5話でもちろっと見せてた2人の関係性とかヤズミ隊員の想いとか、今までのエピソードで描かれてたキャラ性をちょっとしたところから深いところまで拾って活かしてるのも実に細やか)。やっぱキャラクターが引き立ってこそストーリーもぎゅっと引き締まって楽しくなるし、そこを作品全体という大きな枠組みで捉えるのも込みでしっかり丁寧に描いてるのは太田さん脚本の好きなとこだなと

 

そんな今回のエピソードはエノメナの出現、そしてエノメナにより狂わされた人間達の暴走という地獄絵図が繰り広げられる様からスタート。「エノメナが既に函館・仙台・水戸と三度日本各地に現れGUTSを翻弄していた」という経緯を前提に置き、エノメナの4度目となる出現を導入としていきなりスタートした今回のこの構成、なかなかスピード感と勢いのある構成ではあるものの、GUTSを煙に巻きながら行動するエノメナの不敵なキャラ性の強調、および「GUTSが東京の一ヶ所ではなく日本各地色んなところへ赴き戦ってもいる」という防衛組織GUTSの設定への奥行きの創出を同時にスッと為したなかなか巧みな作劇で良いですよね(第1話のモンゴル平原や直近の前2話の宇宙などGUTSの活躍の場の幅広さは時々描かれてるけど、日本圏内でより実感しやすく示したのも上手い)。ストーリー的な軸がデバンとサーカス団にある分それ以外を極力スムーズに進めるに越したことはなかったのもあるだろうし、エノメナ周りを唐突感を感じさせないシームレスなスタートにしたというところでも絶妙だし、早速褒めちぎりになっちゃうけどTVシリーズ登板初手でこのテクニカルさを見せた太田愛さん流石すぎるなと改めて

しかし改めて見てもエノメナ、暴走した人々の過激な大暴れのシーンやその中で不敵に笑うエノメナ自身の妖しげな雰囲気など諸々込みで凄く不気味な存在感があって良い敵キャラですよね    あくまできっかけを与えるのみで自分はそれにより暴れる人間達が自ら滅んでいく様をじっと見て嗤うのみ、GUTSが現れれば呆気ないほどにあっさりと姿を消す、という悪趣味極まりないドス黒い悪意と、立ち向かおうとする者を相手にもしないタチの悪さを凝縮させた、これでもかと言わんばかりに「悪」なキャラ造形最高(暴走した人々のパニックホラーじみた描写も相まって怖いよな)  GUTSの面々からも一貫して「魔神」と呼ばれるというSFテイストの世界観から良い意味でズレた雰囲気も非常に独特で面白い  「指一本動かさず人類を侵略する侵略者(意訳)」と表現されてたけど、ああして人類を侵し嬲った後で何をするかというところが明確に描かれてないから、ただただああして下等生物で遊んで楽しんでるだけのカスかもしれない、っていう謎めいた底知れなさも好き(「明らかに知性や意志はあるのに意思疎通のための言語は一切用いず、ああして嗤う様だけが意志を読み取れる唯一の情報」という怪人とも宇宙人とも違うラインの描き方がまた良き  レナの「悪魔」が表現として一番相応しいよなぁ)  デザイン的にもファンタジックな意匠を纏った怪人、というまさに「魔神」と形容する他ない姿がユニークで素敵なんですよね。チェーン付きの胸の装甲や袴状の裾が広がった足回りの意匠といった知性・文化性を垣間見せるファンタジックな服っぽいデザインが色々考察できるしほんと面白いキャラである(胸の感じからして女性っぽいんだけどどうなんだろうか)

 

このエノメナの行く先々に現れ狙われていた存在としてストーリー上に大きく浮上し関わってくるのが今回の主役たる怪獣デバンと彼を連れたサーカス団の面々。そして前述の通り彼らの絆を描くドラマが今回の見所としてストーリーを彩る軸となっていました。ひょんなことから出会ったデバンを本物の怪獣だと知らないまま一座の仲間に引き入れ、おっちょこちょいだけど純粋で真っ直ぐなデバンのことを気に入って彼が本物の怪獣と知った後も一緒に絆を育み続けたサーカス団のみんなと、その優しさに囲まれて穏やかに過ごすデバンの姿があったかくて良いよね...彼らが一緒に過ごしてきた道程(デバンが本物の怪獣だと知った後のこととか含め)とかは殆ど描かれないんだけど、六平直政さん演の強面だけどデバンをはじめとした団員達を優しく気遣う好漢な団長さんをはじめとした仲間達の明るく個性的なキャラを見てると自然とデバンが受け入れられ愛されてきたんだろうなぁというのが想像できて、そうしてディテールが敢えて視聴者の想像に委ねられてるのも込みでスッと良きドラマが出来上がってるのがとても好き 怪獣だどうだではなく今まで見てきたデバンの人となり(人?)を信じ度量大きく受け入れたんだろうなぁ団長 良い異種間交流ドラマだ(本エピのコンセプトは太田さんが子供の頃考えた「怪獣ショーの怪獣が本物だったら」が基らしいけど、そこからここまで膨らませたのほんと脱帽)

またこのサーカス団とデバンの友情模様で特に強く目を惹いたところとしては、エノメナの再度の出現で街の人々が暴走しデバンの力が必要となっている中で「デバンを戦いの道具にはさせない」という想いの下GUTSへの協力を拒むというエゴ強めの意志をサーカス団のみんなが示したとこであったなと。視聴者目線で身も蓋もない言い方してしまうと「他の奴のことなんか知るか」という身勝手な選択でもあるのだけれど、デバン共々戦う力を持たない立場である彼らからすれば「大切な仲間を(防衛チームの護衛も付くだろうとはいえ)みすみす危険だらけの戦場の真ん中に連れていく(しかもそこにいる敵は他でもないデバンが狙い)」なんてことを許すわけにはいかないという気持ちになるのは一人間視点だと大いに理解できるし、ここをサーカス団とデバンの絆の一端として(選択を迫られるよりも前に団長が「デバン、帰るぞ」と促すという即断をしてのけたのも込みで)敢えてストレートに描いたのは凄く刺さるものがありましたね...心持ちとしては「危険真っ只中の状況で見ず知らずの人間と大切な人、どっちを取るかなら後者を優先する」みたいなのと同じだろうし、自分自身がその立場ならどう思いどうする?という無言の問いかけも含ませる感じで、良くも悪くも等身大の人間描写として真摯に描いたポイントとして良かった 迷わず仲間/デバンを取る、というのは汚さでもあり気高さでもあるんだなぁ...ここを描く上でヤズミ隊員に「あなたは街の人達がどうなっても構わないんですか!?」という台詞を言わせたのも絶妙なんですよね。「人々を守る防衛チームの一員、けれど若輩で青臭い一面もある」というヤズミ隊員にこそ言わせられる、GUTSに入れ込む視聴者目線だと真っ当に見えるけど、その実身を守る力を持たないデバンを戦場に送り込むことを肯定してしまっているという、団長達とはまた違ったエゴを内包した台詞、という意味で(このヤズミ隊員の戦うことに対する意識・姿勢、というところは後のエピソードで大きく取り上げられるポイントだし、ここでさり気なく強調されたのはドラマ的に良いポイントだったなと改めて思う)

 

しかしデバンはそんな仲間達の優しさを受けつつも、暴走する人々を放っておくことができずに自ら戦場へ飛び込み、危険も顧みず人々を救うのであった...と、ここは後半の展開で強く胸を打たれたところでありました。自身を囲んで襲いくる暴走した人間達の姿を見て恐怖する以上に涙を流して悲しみ、そして自分を狙うエノメナがいるのも構わずにたまらず飛び出てみんなを助けるんだよなぁデバン...目を細めて涙を流す表情のカットに感情がめちゃ濃く現れてていつ観ても感情移入して沁みてしまう  デバン、広がった裾っぽいデザインがエノメナと共通なのでそこにおいて同じ別次元の生物(起源を同じくする存在かも、というのも想像されるよね)であるというところが強調されてるけど、その上で「他者を踏み躙りその様子を高みの見物で楽しむ外道」のエノメナに対し「傷付く見ず知らずの人々に心を痛め自ら危険に飛び込み救う」という優しく高潔な精神性を強調してくるのが凄くグッときて、良いですよね...平成のピグモン、というのもコンセプトらしいけど、たらこ唇なビジュアルとかだけでなく、文字通り「小さな英雄」な精神性でもそこを魅せてくれるのが素晴らしい

 

そんなデバンの覚悟、それを平然と傷付けるエノメナの外道を目にし、込み上げる怒りを胸に決死の特攻をかけるダイゴとシンジョウ隊員の姿もさり気ないながらもカッコいいところで好き。シンジョウ隊員の「俺の脳味噌がショートしたらダイゴ、お前が撃て。お前がショートしたら、俺がお前を撃つ...!」という台詞と、それを受けてのダイゴの無言の頷きも、覚悟が感じられて凄く良いよなぁ 小さい頃に観てた時からとてもグッときてるポイントの一つです  まぁその後エノメナに一発叩き込んだは良いけど、安定の墜落をかまされるんだけどな!もう絶対お約束分かってるでしょこんなん(

 

からのシチュエーションはティガvsエノメナへ。瀕死の体を押して自分を救い傷つき倒れたデバンを見て、エノメナへの怒りを激らせパワータイプとなったティガの猛攻がエノメナを押し追い詰めていく流れに熱いものが込み上げる良きマッチでしたね。今まで高みの見物を貫いていたところからいざ戦うとなった途端、テクニカルな肉弾戦に光弾での攻めなどけっこうな手強さを見せてきたエノメナもなかなかであった(人間の自滅を高みから楽しむように眺めるけどいざ戦うとやたら強い、というキャラ造形、後に太田さんが登場エピを担当したコスモスのワロガに近しいものがあり、改めて見るとちょっと寄せてるとこもあるのかなーなんて 明らかに意思があるのに言葉も発さない不気味さも割と似通ってるし)けど、デバンに放たれた光弾をお返しとばかりに掴んで投げ返し、電磁波を発する肩の角をへし折り、飛び蹴りで光弾を発射するデコを破壊し、逃げようとしたところをティガ・ホールド光波で捕らえ、逃げ場を無くしたところをデラシウム光流でフィニッシュ、というエノメナの悪意と手札を一個一個丁寧に潰していくティガの一連のバトルも凄く爽快でカッコ良かったですね。徹底したボコしに滲む強い怒りを感じたわね...ティガ・ホールド光波、あんま使わない技なんだけどこのシチュでのエノメナの逃走封じが凄く印象に残ってて実はけっこう好きな技 エネルギーを絞るように広げた腕を縮めるモーション良いよね

 

こうして決着はついたものの傷ついたデバンは事切れ、仲間達は彼の亡骸に寄り添い泣き伏すという、やるせない結末を迎えたのだった...

と思いきや、ラストに実は生きて元気にしていたデバンを連れ再び一緒に過ごすサーカス団の姿が描かれ、それがダイゴにも伝わるというどんでん返しのハッピーエンドで締めとなりました。ここはピグモンに似なくて良かったなデバン...!デバンの亡骸(死んでない)を回収しようとするタンゴ博士を誤魔化すために一芝居泣きの演技を打つ団長といい、「みんな元気」の一文と写真にそっと写ったデバンの姿でダイゴに無事が伝わるラストといい、サーカス団らしいユーモアを効かせたところも良かったですね 「みんな元気」の一文を添えた紙が、暴走した人々に襲われてぶっ壊れたワゴンのダイゴへの手書きの修理代請求書というしれっと仕込まれたネタも好き なんでよりによって特に絡んでなかったダイゴ宛なんだろう...w  デバンとサーカス団のこの先の健勝を明るく願う、気持ちの良いラストであった 良かった

 

 

以上、ティガ第21話でした。デバンとサーカス団の絆を軸に、細かく丁寧なタッチで掘り下げられる人間ドラマが沁み入る非常に心温まるエピソードでした。GUTSの面々の人間味がコミカルさ・カッコ良さの両面で良い感じに深められてたのも良きね  小さい頃同様やっぱり個人的にも凄く心に響いたし、改めて見直して太田さんらしい手並みが随所で良さを発揮してるのが窺えていっそう好きになったなぁと やっぱり良いマスコットしてるわデバン ティガ25thでももっともっと取り上げて欲しかった...!(総集編関連のナビゲーターでもだいぶ破格とはいえさ)

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた