AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

怪獣 あとしまつさせてくれない

ウルトラマンティガ

第5話「怪獣が出てきた日」

感想レビュー

 

 

自分に害が及ばないところからとりあえず防衛チームを批判するカスメディアが出てくると観ててちょっとイラッとくるけど、同時に「今ウルトラシリーズ観てるぜ...」って感じられて全身に活気が満ちるので最高だね

自分に害が及ばないところからとりあえず防衛チームを批判するカスメディアをもっと出せ!!(キマった目)

 

海岸に打ち上げられた怪獣の遺骸の処理を巡るGUTSのオペレーションとそれを取り巻く世論をリアルタイムな展開運びと共に描く今回のエピソード。ウルトラシリーズという空想特撮作品の根幹を成すものでありつつ、ティガ以前のシリーズだと(皆無ではないものの)ややぼかした感じで比重少なめに描くことの多かった「怪獣」「ウルトラマン」という強大にして未知なる存在が現れ波乱を巻き起こす世界その波乱に相対する組織やそれを見つめる市井の人間達といった世界観設定を「マスメディア」という要素をガッツリと交えて多角的に掘り下げ、ウルトラシリーズにおけるリアリティラインに一つの革新を起こしたと言っても過言ではない記念碑的エピソードというところでかなり印象深い話ですね。同一世界観のダイナにおいてもこの要素は少なからず継承され、続くガイアに至ってはマスメディアそのものがストーリー全体における重要な要素の一つとして大きな存在感を示すまでになり、というところをはじめとして、以降のシリーズでもマスメディアの存在や市井の人々の反応、そこから派生したストーリーにおけるリアリティラインの底上げがますます欠かせないものとなっていったし、マジでめちゃくちゃ大きな革新だったよなと思う

 

そんな今回のエピソードの主軸は前述のあらすじにも一部書いた通り、打ち上げられた怪獣・シーリザーの遺骸の処理に苦戦するGUTSの緊迫したオペレーションと、それに並行して描かれる市井の人々やマスメディアのGUTSに対するどこか他人事のように間伸びしたリアクション・批判体制という対照的な2面の描写から掘り下げられる、怪獣災害に晒される世界における怪獣および防衛チームを取り巻く世論のリアルな描写。怪獣という途方もない脅威に対し、そのスペシャリストとして集められ組織された者達が知らないことだらけな中で1秒を争いながら挑み、それすら次々に上回られながらも諦めず被害を最小限に抑えるべく立ち向かっている一方で、そうして守られる側の一般人達は「怪獣が出てきて自分の家とか踏み潰されたら腹が立ちますけどねぇ」と薄笑い気味に言ったり「GUTSが早く倒してくれないと困るんですけど」とぼやいたりとどこか怪獣の脅威やGUTSの活動に対し斜に構えた態度をとるばかりという、怪獣の脅威に現場で直に向き合い続ける者達怪獣の脅威というものに実感が湧かないが故に対岸の火事的な認識でとりあえずの危機感ばかり示せない者達の認識のコントラストの際立ち方が面白いんですよね。別に悪意があるわけではなく、火中から離れた安全域にいるが故の実感や危機感の薄さがあるからこそああいうリアクションをしているというのはありつつも、そうして斜に構えたリアクションができてるのはひとえにGUTSが怪獣災害の被害を抑え込んでくれていて自分達に火の粉が及んでいないから(怪獣災害というものへの実感が湧かない状態が保たれているから)であるということに気付いていない(意識が及んでいない)というに人々の浅慮・認識不足の否めなさといったところも含んだ、あまりよろしくない方の意味で等身大の人間描写としてグッと掘り下げられている一般人のリアクションの描写とかかなり解像度高いよなと(この辺の実感が伴わないからこその一般人のリアクションの描写は、本編で描かれていない部分を含めてもまだ怪獣災害の事例が少なく怪獣災害に直接触れた人間も多くはないのだろうとなんとなく感じられるこの序盤のタイミングだからこそより説得力をもって描けたとも言えるし、そう思うとこのテーマの話を序盤で描いたのは思い切ってるようでいてかなり理に適った構成だったんだろうなとも感じられてそこも感心するところ)  現在の現実世界でも警察や消防隊、災害対応にあたる人達に対する理不尽な当たりの強さみたいなものが見られる場面は多々あるし、そういう意味でもリアリティある描写としての説得力は高かったなと感じましたね  最近クウガ観てた時もグロンギ周りの描写に現実の情勢と類似する部分が多々見られてリアリティの掘り下げに感心したことがあったし、リアル志向の作品今観たからこそよりくっきり見えてくるものがあるのは興味深い知見であった 現実世界の苦境が空想の脅威に追いついてしまっているとも言えるのでそこにちと複雑な想いもあるが...

メディアもメディアで、「怪獣災害アナリスト」とかいう一見いかにもな肩書きの人間がやたら偉そうに画面の奥で「GUTSの責任だし実質人災では?」「状況判断が甘かったんだよなァ〜」と無責任な批判をダラダラ垂れ流している有様、と良い感じに神経を逆撫でしてくるのが良い意味でめちゃくちゃ嫌な質感。「批判的な観点から特定の組織に物申す存在もいるからこそ体制や意識の改善・向上等に繋がっていく」というのがマスメディアの果たす役割の一つではあるので批判すること自体は決して間違いではないのだけど、怪獣災害が起きGUTSがそれに命懸けで挑んでるまさにその瞬間に、安全圏から物知り顔してふんぞり返りうだうだ揚げ足取りするばかりな人間がそれをやってる、というのが最高に終わってるんだよな...「『怪獣のことが100%分かるわけない』のにGUTSの判断は甘い!」とかいう特大のお前もじゃろがい発言を平然とぶっ放してたり怪獣が今まさに暴れリアルタイムで危機に晒されている人間が大勢いたりするのに安全な番組セットで呑気にジュース飲んで「ここでなんとかして欲しいものですなぁ」とか他人事感覚でほざいてたりといった怪獣災害アナリストのジジイの(直接描写はされてないけど、コイツ実際に現地に行って色々調べたり実情を目にしたりしたこと一度も無いんだろうな...)と一目で分かる感じのいちいち癪に触る言動の描写も非常にムカついて一周回って好きなところ。この程度の人間が有識者としてメディアでうだうだ喋ることができ時に誉めそやされてしまうことのヤバさみたいな社会風刺も含んでる感じがあってそこがまた良きよね。こういう奴は実際に怪獣に襲われて何もできずビビり散らしながら「助けてGUTSーッ!!」って喚いて恐怖と絶望に塗れながら食われりゃ良いんですよ(かげき) 現代だとこういうタイプのネット弁慶エセ論客みたいな人間はトゥイッタとかで腐るほど目にするし、だからこそ本エピの怪獣災害アナリストのジジイの描写には嫌悪感を強く感じるのかもなと  これを25年以上前にこの解像度で描いてたの凄いなと改めて思う

 

しかしそんな中でも、自らの足で怪獣災害の現場へ赴き、命懸けで戦うGUTSの一進一退の活躍を生身で追い、起きていることを自らの目でしっかり正しい形で捉え伝えようと奔走する真っ直ぐで高潔なマスメディアも存在する、という希望がジャーナリスト・オノダさんの姿を通じて熱く描き出されるのが本エピソードの最大の見所。前述の対岸の火事な視点で中途半端に物を語りGUTSをああだこうだとなじるような者達がじっとり嫌な感じで描かれるところが徹底されているからこそ、その対比として泥臭く駆けずり回りながらも曇りない瞳で確かな知見を得たオノダさんが「怪獣災害が頻発するこの日本の苦境の中で、我々が一つ幸運と言えるのは、『優れた戦略家を擁するGUTSが、我々を守っている』ということである。一市民として、感謝を捧げたいと思う」と、GUTSが奮闘し被害が抑え込まれているからこそ確かに守られている平和があることやそれに対するGUTSへの賛辞を紡ぐ様が沁み入るものとなって輝いているのが最高に気持ち良いんですよね。単純にGUTSに肩入れしてるというわけではなく、ちゃんとその目と耳で見届けた真実に真摯であるというところがマスコミ・マスメディアの鑑すぎるんよな  思うようにいかなくて感情的になったり駆け回って大変そうにしてたりする場面も多いけど、その泥臭さと人間味が必死に何かに向き合うカッコ良さになってるよなぁオノダさん 後のエピにも登場する人だけど、本エピソードのテーマとのマッチ感の高さも込みで凄く味のあるゲストキャラだわ

 

と、一般人やメディアの反応周りの描写について集中的に触れたけど、そこと並行して描かれた怪獣シーリザーへの対処の奮闘するGUTSの活躍、ここも凄く見応えのあったところでありました。打ち上げられた遺骸の調査や移動のための牽引から始まり、アクシデントで目覚めたシーリザーによる人的被害を防ぐためにメンバーが総動員で情報をかき集め、またそれを基にして作戦を立てて実行し、と息つく暇もないくらいに忙しなく動く様にこちらも思わず息を呑みグッと引き込まれちゃうんですよねぇ...そこに説得力を与えるSFテイストな専門用語等を交えた会話それをオペレーションとして緻密に描き上げる緻密なミニチュア特撮の表現といった細部の作り込みも、一目で全ては把握しきれないながらも自然と見入る/聞き入るものばかりだし、ほんとリアリティあるSF特撮ドラマとしてクオリティの高さに唸るばかりですよ シーリザーを追い込んだ貯水プール的な場所のミニチュアセットの作り込みとか特に凄いよね

またこのGUTSのオペレーションの中で描かれる、隊員達各人のちょっとした人となりや関係性が窺える会話等のキャラクター描写もさり気なくもストーリーを良い感じに引き締めていて好きなポイント。サワイ総監とイルマ隊長の物々しい雰囲気の対話年少ながらも人一倍情報解析に奔走するヤズミの頑張りのシーンはオペレーションの緊張感をグッと引き締めつつ各キャラの立ち位置やカラーをしっかり押し出しているし、緊張するレナをダイゴが冗談で和ませたりシンジョウ隊員とホリイ隊員が冗談混じりのどつきあいをしたりする場面は彼らがお互いそういうことを言い合える関係性なのだということを小気味良い会話劇で魅せながら程良く緩めな雰囲気も醸していて楽しいしと、序盤からキャラクター周りの丁寧さが凄く見てて気持ち良いですね(特にシンジョウ隊員とホリイ隊員の、それなりの悪態で殴り合いつつもちょうどいいとこでお互いウン...ってなって普通に揃って作戦に戻ってくあの感じはとても好き。w あのくらいのどつきあいが会話として普通に通じるくらいこなしてきたんだろうなと感じられるよね) 話のテーマ的に世論に対するGUTSの面々のリアクションとかを描いたりもするのもアリだったかもだけど、そこを描かず「怪獣災害に立ち向かうGUTSとその実情を実際に知り得ていない一般人やマスメディア」という対比こそを主題としたことで、市民や平和のためにオペレーションに挑むGUTSの純粋な活躍の模様(およびそれに対する世論の描写)や上述のGUTSの面々のキャラクター描写が映えたというところも巧いよね ほんと序盤からのキャラクター周りの地固めが絶妙

そしてこのキャラクター描写で特に目を惹いたのは何と言っても本エピソードの主役の1人たるムナカタ副隊長の奮闘の描写ですね。各所で状況をしっかりと見つめ、最適解を導き出そうと常に気を張り各メンバーにテキパキと指示を送る様がストーリー通じてクールに描かれており、今までにも増して副隊長としての威厳を多分に見せつけていて良きであったなぁと。派手に動いていたわけではない、ある意味で縁の下の力持ち的と言えるものかもしれないし、それ故に一般人やメディアにはその頑張りがなかなか伝わらず色々言われるのかもしれないけれど、だからこそその姿を現地でしっかりと追い見ていたオノダさんの賛辞がますます光って良きであった

 

またそんな今回のエピソードの発端となった怪獣・シーリザーの存在感も好きなところ。腐敗するほどになって死んでいたはずの怪獣がふとした拍子で蘇生して文字通りのゾンビとなって動き出す、という出鱈目さからして唆られるし、その上攻撃を取り込むぐちゃぐちゃのボディや唐突な首伸ばしといっためちゃくちゃなことを次々繰り出してGUTSを翻弄する様が良い厄介さしてるし、未知性高めな設定や演出がまさに怪獣らしくて凄く良いよね アンカーやミサイルが刺さる瞬間の腐敗してぶよぶよなボディのアップがやたらリアルできしょいのもインパクトあるし(持ち上げられた時に体表が裂けて中身ぶちまけるところが割とグロなの演出に容赦がなさすぎる...) それでいて燃えた身体をはたいて火を消したりと妙に人間臭いアクションをたまにするところが元はちゃんと生物だったのを窺わせて妙に癖になる良いアクセント 多分あの時普通にアクシデントとして火が燃え移ってたよね...

 

かくしてシーリザーの一件が片付いた後、バーでグラスを傾け乾杯し労をねぎらう副隊長とオノダさんのシーンが描かれ物語は締め。現場では直接的に交わることはほとんど無かったものの、共に命懸けの現場を駆け回り互いの使命を全うしたこの2人が静かに語らう大人なカットで気持ち良く締め括る、というのが渋くて良きでしたね。本エピの軸たる「GUTSとマスメディア」という二軸のキャラ同士ではあるものの、前述したような対となる関係性とは異なる、同じ戦場をそれぞれ必死に駆ける戦友とでも言うべき関係性として味わいが光るのが最高であった

 

...まぁこんだけカッコ良く決めたのに本当に本当のラストカットは「ムナカタは、酒が飲めなかった」なんだけどね() 台無しだよ!!ある意味最高だが()  冒頭のバーのシーンのミルク飲んでる副隊長が伏線になって(それに「身体壊してるんですか?」と語りかけるオノダさんも良いカモフラージュ)、最後にちょびっとグラス傾けた副隊長が千鳥足になる後ろ姿で種明かしするのマジで秀逸なんよな...w これが現場で急遽決まったらしいのライブ感がハマりすぎてるやろ

 

 

以上、ティガ第5話でした。怪獣が現れる世界における防衛チームの奮闘やそれを取り巻く人々の反応を多角的にリアリティある描写で描き上げるストーリーが強く目を惹く、ウルトラシリーズならではの世界観設定の更なる魅力をグッと深掘りしらエピソードでありました。こういった面で積極的に革新に挑んだところや、その中でも丁寧なキャラクター描写等の基礎を固めることを欠かさなかったことがやはりティガの魅力の一つなんだなぁと改めて実感しましたね とても良かった

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた