AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

トモダチ デリシャスマイル

ウルトラマンティガ

第6話「セカンド・コンタクト」

感想レビュー

 

 

本エピの感想記事を書こうとなったその日にTLにナショジオの下記の記事が流れてきたの、ちょっとびっくりしちゃいましたね...クリッター/ガゾートの解像度がより上がるかもなので皆様も是非読むと良いぞ  クリッター/ガゾートがああなのは生物の生態・進化の形としてある種自然でもあるのだと、今になって思わぬ形でキャラ造形の奥深さが増したのは面白いところであったね

なぜ親や兄弟姉妹、子を食べる動物が多いのか? 共食いのメリット | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト

↑そのナショジオの記事

 

電離層に棲む生命体クリッター、そのクリッターが変異した怪獣ガゾートと人類の接近遭遇を描く今回のエピソード。ティガをご存じであれば言わずとも知っているであろうという問題作にしてティガを代表する傑作回の一つであり、やはり改めて観てもかなり刺激の強い話であったなと。端的に言い表すならば「めちゃくちゃシビアに描く共存・相互理解の話」って感じですからね... 後のシリーズで大きく取り上げられるようになっていく「怪獣との共存共栄」という要素・テーマが濃くなっていく前だったからこそ、そこにシビアなくらいに現実的な観点でもって切り込めたエピソードって感じもあり、今見るとそういう意味でも興味深い一作

 

しかし今回のエピソード、今までにも数度つまみながら視聴したことはあったけどやはりティガのエピ全体でもかなりシリアスなテイスト強めな一本なのでそういうところでもかなり印象際立つ話だよなぁと改めて。冒頭数分から謎の影の襲撃を受け恐怖するミズノ博士(ガラスが砕けるような画面上の描写でその運命をある程度察せられてしまうのがまた辛い)舞い込むミズノ博士達の探査船の消息途絶の報放心・動揺するホリイ隊員、とじっとりとした恐怖感や絶望感を刻んでくる展開や描写が連続し、そちらが片付く間もないままガゾートが登場するという怒涛の流れで空気感をヒリヒリと緊迫したものに彩ってからの後半のアレという容赦のなさ過ぎる展開運び、1年スパンの作品が序盤のまだ10話台も行ってないとこでやって良いやつじゃねぇんだよなぁ...() いくら横軸のバラエティ豊かな作品とて容赦というものがね?

 

してそんな今回のエピソード全体を強く牽引した最大の要素と言えば、言わずもがなではありますがやはりクリッター/ガゾートのインパクトとそれを基にしたストーリー展開でしょう。エサや他生物の乏しい電離層で生き抜くために仲間をエサとして食らうよう進化した生命体、という生物としての生態にSF的なハッタリを効かせた良い感じに一捻り加わった設定を軸にして、意思疎通ができる相手─友達こそがエサである」という人間と全く異なる価値観を突きつけてくる存在、悪意が無いからこそ通じ合うことのできない脅威としての存在感を存分に見せつけてくるアプローチがほんと何度見返しても秀逸だよなとなるんですよね...友好的に見せて騙してくる悪意ある侵略者とか本能のままに獰猛に暴れる純然たる脅威としての大怪獣というところが基本であったウルトラシリーズの敵の中において、言語的な対話もできるし理性も感じられる、と一筋の希望を示した上でそれを盛大にひっくり返す無邪気な無慈悲さを有した他種族の生命体、という新たなアプローチでの「怪獣」らしい恐ろしさの見せつけを打ち出したセンスよ

それでいてこのガゾート周りの設定を軸にした描写を鮮烈なドラマ性を伴う形で見事に描き上げた、細かな伏線配置や段階的な起承転結により構成された展開運びもまた本エピソードの素晴らしいところ。ミズノ博士達との不幸なファーストコンタクトを無駄にしないためにホリイさんが博士の意志を背負いガゾートとの対話に挑むという希望を感じる展開翻訳機を通じて言語的なコミュニケーションも可能と分かるという光明、とじわじわ上げていったところからの、

「トモダチハ、ゴチソウ!」

「トモダチハ、ガゾートノ、タベモノ!」

という台詞でクリッター/ガゾートの本質、ファーストコンタクトの悲劇は不幸な事故ではなく得てして起こったものだったという現実を端的に突きつけ視聴者と登場人物を叩き落とす容赦の無い丁寧な構成、最高に人の心が無くて良いよね...良くねぇ あの台詞が飛び出た時のヒュッ...となる感覚よ(ホリイ隊員だってそりゃ思わず信じられなくて「 翻訳が上手くいってないんか...?」ってなりますわ)  「クリッターは何も無いはずの電離層でどうやって、何を食べて生きている?」というシンジョウ隊員の疑問「ガゾートが人間と同じロジックで物事を見ているとは限らない」と見るイルマ隊長の私見といったクリッター/ガゾートの本質に肉薄した伏線描写翻訳機から飛び出た逃げ惑う人々を眼下に定め闊歩するガゾートの第一声が「オイシソウ!」だったり、ガゾートが口から涎まみれの人間の衣服を吐き出してたりといったガゾートのヤバさをほんのり印象付ける不穏描写などで先んじて後の展開を示唆するものを与えつつも、ホリイ隊員の懸命な行動に希望を見たいという気持ちの方が最初上回るが故にそこに目を背けたくなるようにしているのが、その上で「トモダチハ、ゴチソウ!」をぶっ込んでぶち壊すところまでセットという形で実に凶悪なのよな(純粋無垢そうな子供の声と口調によって先のあの台詞をはじめとしたガゾートの言葉が紡がれる、という演出がガゾートの邪気の無さをこれでもかと印象付けてるのもまた希望からの絶望への傾きの布石として上手い)

総じて「共存・相互理解はどんな状況でどんな生命体にも必ず成立するのか?」に対して「NO」という解を示す、という上で考え得る最悪を容赦なく詰め合わせたって感じの展開であり、まーどえらいえげつないよな...となりつつも、だからこそめちゃくちゃシビアさハードさが極まってて独自のテイストになってて面白いんだよなと凄く感心もしてしまうんですよね 良い 良くねぇ

それにガゾート、設定やドラマ周りも良いけどデザインやディテールといったところもまた良きなんですよね。エイみたいな扁平気味なボディにペンギンっぽい短めの少し可愛げある手足という不思議なプロポーション、悪魔を彷彿とさせる凶悪な面構え、赤ん坊の鳴き声を思わせる甲高い鳴き声といったどこか可愛さのある感じと恐怖感や生理的な嫌悪感を絶妙に同居させたデザインがそれまでになかったタイプの怪獣デザインの一つとして凄く目を惹いてとても好き。魔王ダンテがモチーフだというあの顔が扁平な身体からグッと突き出してるあのなんかしっくりくる部位ごとの造形のバランスの良さが絶妙で魅力的なんすよ 最近の野暮ったいデブのガゾートくんはなんか違うんですよ!!(過激派)  この独特さもティガ怪獣代表格に据えられる所以だなと思います

 

にしてもこのガゾート周りの展開の中心にいた今回の主役たるホリイ隊員、彼の本エピにおけるあれやこれはほんとまとめると可哀想すぎるの一言に尽きて辛い。冒頭数分から恩師の死をうっすら察しざるを得ない事態に直面することになって一時周囲に当たってしまうほどに激しく動揺し、ガゾートとの対話の見込みが見えた際にはミズノ博士の死を無駄にせまいという意気込み(無駄になって欲しくない、という縋るような願いも込みだったかもしれない...)と共に前線へ繰り出し必死にガゾートに呼びかけるも、返ってきたのは無慈悲すぎる現実とそれにより折れそうな心に追い討ちをかけるようなガゾートの襲撃であった、と徹底的にホリイ隊員の支えや尊厳を丁寧に丁寧にぶち砕く展開まみれなのちょっと惨過ぎますってば...ってなるんだよ  ガゾートと話が通じるかも!と一心に信じてたところから、その本性を知って「うわーっ!こっち来んなーッ!!」と強めの口調を拒絶したり、空へ発っていくクリッターを天使みたいだと言ったレナに「見かけはな」と冷たく吐き捨てるように返したりと、色々へし折れてしまったが故の恐怖や失望が言動の節々に滲むようになってしまってるのがまた胸にくるし...本当に辛い  前者は命の危機に晒されてる最中且つ理解し合えないと分かったまさにその瞬間なので致し方ないし、後者も「でも...博士にも見せたかった...」という台詞にも繋がるので決して擦れて斜に構えるようになってしまったばかりでないのも窺えるんだけど、だいぶ意図的に冷ややかな台詞回しにされてる感はあるしまぁそういうことだよなと(ムナカタ副隊長の(所詮コミュニケーションは無理、か...)というモノローグといい、今回のエピ自体が随所の台詞回しにけっこうドライさや冷ややかさみたいなものを意識して含ませてる感じあったしな)

てか今回のエピソードなんでこんな重いかってムードメーカーのホリイ隊員が最初の時点から心乱れて冗談とか言うこともできなかった(というかシチュエーション的にコミカルさが挟まる余地も無かった)ことがけっこうデカいよなぁと これまでのエピでは何かしらその手の冗談や小気味良い言動で和ませることが多かったしな...ムードメーカーとしてのホリイ隊員の存在感の大きさは理解してたけど全体の空気感において占めるところというのを改めて実感した

 

と、救いの無いシリアスが連続したストーリーに心が苦しかった本エピでしたが、その流れから後半にて繰り広げられるティガとガゾートの戦闘シーンは演出的にもなかなかに見応えアリで実に熱くなったところでありました。美しい夕焼けに薄く赤く照らされながらのマルチタイプによるスタンダードな肉弾戦からインストverのTake me higherのスタイリッシュなメロディをバックにしたスカイタイプによる疾走感ある空中戦へ移行していく戦闘演出・シチュエーションの切り替わり、これが実に痛快でストーリーの陰鬱さに対するカタルシスにもなっててめちゃくちゃアガるんですよねぇ。ウルトラシリーズにおいては一種の鉄板である「夕陽で赤く染まるフィールドでの戦い」というシチュエーションもまた綺麗で最高よね  実写の街並みとミニチュアが組み合わさった背景の上をスカイタイプとガゾートが高速で飛び交いチェイスする様を合成をフルに使って演出した一連のシーンは外連味高くてグッと魅入るしインストverのTake me higherのメロディラインがドラマ面のシリアスで少ししっとりした雰囲気に馴染みつつそこからのティガの逆転と勝利をじわじわと盛り上げていくとこに繋がっていくというBGM捌きも凄くドラマチックだし、総じてティガ序盤のエピの戦闘シーンの中でもかなり諸々の演出に力の入った名バウトだと思いますわね  夕映えでうっすらオレンジに染まっためちゃくちゃ美しい姿や、平成ウルトラだとけっこうお馴染みの「ウルトラマンの傷口から流れる光の血」の演出が印象深く描かれる様など、さり気なくティガの神秘性や芸術性の高さを印象付ける画や演出が織り込まれてるのもグッド

にしてもTake me higher、本編でBGMとして流れた時の打率がマジで高いのでそういうとこでもほんと名曲だよな...と何度でも思っちまいますね  OPだとなかなか聴けない部分の小気味良く熱い旋律にフォーカスしたインストverがここぞでドンと流れてきた時とか静かで少し切ない感じのしんみりくるメロディとスタイリッシュ且つヒロイックなメロディの緩急が絶妙な間奏がドラマパートの山場にガチッとハマった時とか、漏れ無く外してこないのがたまらんのですよ 今後のエピソードでも何度も感情ぶち上げてくるし今一度楽しみだY

 

 

以上、ティガ第6話でした。ティガ序盤傑作群の一角にして特に印象深いところ多しな傑作エピにして問題作なエピソードとして今一度じっくり視聴致しましたが、やはり凄く面白いなと改めて強く感じましたね...かなり重く惨いストーリーでもあるのだけど、そこに強く太いテーマの芯が通ってるからこそそれらが深みとして昇華されてるのは見事であり、今なお色褪せないパワーに満ちた一作だなと思いました。諸々の演出周りも好きなポイントは多いし、やはりお気に入りのエピの一つですね

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた