AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

鎮魂

ウルトラマンティガ

第11話「闇へのレクイエム」

感想レビュー

 

 

「リョウスケ...違うわ!ホリイくんは、

足は短いし(初撃)

太ってるし(追撃)

つまんないギャグ言うし(波状攻撃)

欠点だらけの人間よ!(絨毯爆撃)

ほんとここのサヤカの畳み掛けるようなディス酷すぎていつ聞いても笑っちゃう(聞いてる最中に「...!?」って感じで目をかっ開いてサヤカをきょろきょろと3度見4度見くらいしちゃうホリイ隊員の動揺が後ろの方で半見切れくらいで描かれてるのが余計面白くてダメ)  「でも、欠点だらけでも...みんなから愛されてる!」に繋がる、リョウスケの説得のための大事な台詞なんだけど、心情を吐露したリョウスケがヤバいことになってる凄くシリアスな場面でこれなのでシュールなんよ なんでよりにもよってそこでフルパワーのディスぶっ込んだんですか(

 

人間の心の奥底、暗部に眠る闇の暴走を描くホリイ隊員主役回。後の回、および後年のダイナにおいても長らく禍根を残していくエボリュウ細胞の登場エピとして、ティガ序盤のシリアス分をグッと高めた印象深いエピソードですね。同巻収録の前回前々回共々小さい頃に何度も観たエピなのですが、子供ながらにも凄く辛く哀しいことが起きているのが伝わって大人になってなお一際記憶に強く刻まれていたエピの一つです 小さい頃にこういうエピをしっかり何度も噛み締めるように観てたの、我ながらではあるけど非常に大きな経験であったなと思う

 

そんな今回ですが、まずやっぱり主役エピなのもあって今までにも増してホリイ隊員のキャラが魅力的に押し出されているのが凄く良いところだよなぁと。ホリイ隊員といえばコメディリリーフ・ムードメーカー的な立ち回りで場を程良く和ませる陽気さや人間味が面白いキャラであり、これまでのエピソードにおいても節々でその味わいが滲み出ていたけれど、今回は主役回で必然的にホリイ隊員主体の展開運びになってたこともあって、ふとした場面含むさり気ないシーンの数々においてもそんな彼のキャラクター的な楽しさが存分に発揮されてたのがとても楽しいところでありましたね。プールサイドでにゃんこと目が合って笑顔を向けたけど調査でくたびれてたのでなんとも言えない笑顔になっちゃったりとか、リョウスケに褒められて「ニャァン♡」って分かりやすく浮かれた声出したりとか、陽気な関西人らしいノリの良い言動や表情が自然な感じで沢山出てくるのが面白くて良いよな エボリュウにモンスターキャッチャーを撃ち込んで得意げに声を上げる→キレたエボリュウがこっち向いてきて慌てる→退こうとしてシャーロックのボンネットにおもくそ激突して「なんやなんやもう...!」って余計もちゃつく、の一連の動作凄くホリイ隊員らしさが出てて好き。w

一方でそうしたコミカルな様だけではなく、シリアスな場面で人情味溢れる感情模様を見せたりするところもまたギャップも相まって魅力的なんですよねぇホリイ隊員。詳しくは後述するけど、後半のリョウスケに相対してる場面のホリイ隊員の声色や表情はどれも心揺さぶる熱量がこもってて見てるこっちも思わずグッと没入するし感情移入しちゃうので凄く良いんですよね...やっぱホリイ隊員はこういうここぞでの熱さやカッコよさもあってこそなんすよ コミカルな場面もシリアスな場面もしっかりとホリイ隊員を魅力的に演じ上げてる増田さんの演技めちゃくちゃ良いよなと改めて思うな...(柵飛び越えるアクションしれっとやってたりと何気にめちゃ動ける人なのもスゴい) 総じて今回のエピソードでホリイ隊員のこと好きになる人は凄く多いだろうなと。自分も実際そうである

 

そんなホリイ隊員と対比となる、ホリイ隊員の友人・リョウスケの鬼気迫る人間描写を大筋とした「心の闇」を描くストーリーもまた今回のエピソードの大きな見所。常に一番でなければならないという重圧一番でない自分は誰からも愛されないという劣等感に心が揺れ“魔”が刺した結果、エボリュウ細胞という“魔”に魅入られ、“魔”へと転じていってしまい...というリョウスケの心の弱さ故の暴走・苦悶・破滅を壮絶に描き出す生々しくも惹きつけられる描写が強烈なんですよね。鬱屈とした精神の中禁忌に手を伸ばしたり、優れた友人であるホリイ隊員に愛憎の入り混じった感情を向けたり、想い人だったサヤカを今も諦めきれていない様子を見せたりと、リョウスケの心理自体はひたすらに人間臭いというか、誰しもが陥り得る弱さの形である故にある種感情移入しやすいから引き込まれるんだろうなと ここまで大変なことになったのはエボリュウ細胞の介在という一点が大きいしな

それにリョウスケ、ホリイ隊員のことはただただ純粋に友人として1人の人間として認め憧れていたげだったことが余計に辛いんだよな...実際に「発明家としての閃きとチームのムードメーカーになれる明るさ」というリョウスケのホリイ隊員評は、モンスターキャッチャーをこさえて成果を出したりみんなから信頼され何かあったら親身になって寄り添われたりしてた今回のホリイ隊員の描写を見ても的確だし、そうして彼を認めていたからこそ自分との比較で劣等感が更に増したんだろうと思うと物凄く残酷。ホリイ隊員のコミカルさもカッコ良さもきちんと1話の中で描かれてるからこそここが際立つ構図なのがエグいのよなぁ(凄い昔に某所で他の方が言っててハッとなったとこだけど、この再会したホリイ隊員とリョウスケが浜辺のテーブルで向かい合い語らうシーンが「日向と日陰でそれぞれ『光と闇』という2人の対比を示す構図になってる」ってのがまたそこを引き立ててるんですよね  こういう象徴的な演出はハマるとほんと強い)  何よりリョウスケ、「僕の気持ちなんか分かるもんか」と突っぱねてこそいるけどホリイ隊員のことを「お前さえいなければ!」みたいに言ってる場面は一度もない(自分の才能の卑下に終始してる)のがまたしんどいのよな...この手のパターンだと優秀な友人とかに対する羨望が歪んで生まれた憎悪が向くみたいなのになることも多いのに、リョウスケはホリイ隊員のことを憎んでる様子もなかった(でなきゃふと再会して話も弾まないだろうし)の、根っこは凄く真っ直ぐで人が良かったんだろうなと  それ故に鬱屈とした感情がほぼ全て自分へ向いたというのがまた辛い  そのリョウスケの闇(エボリュウの正体)を暴いたのが他でもないホリイ隊員の優秀さであったというのも皮肉だしなぁ  モンスターキャッチャー、後の回でもダイナでも出てくる超便利アイテムなのに、初陣で上げた確かな成果がこれなのが惨い

 

してこのリョウスケが変身する怪獣エボリュウも存在感も実に良き。顔が胸の辺りにある二頭身気味の体格にひび割れたような体表がまさしく異形という感じながらも、ちょっと肌色っぽいカラーやなまじ人間っぽい瞳のある目をはじめとした顔立ちがうっすらと元の存在を感じさせる意匠も含んでるのが、元が何であったかをうっすら示唆してるデザイン性はじっくり見てると凄く胸にくるものがあるよなぁ(ひび割れた体表や人間っぽい顔立ちとか、改めて見ると設定も込みでジャミラっぽさがとても色濃いよなとなる)

戦闘の方もエボリュウの正体を知るが故のティガの「耐える」戦いが今までとは違った趣を出していて良い見応え。ティガという作品のテーマ性とかも理解した上で見るとここの対峙が単なる「怪獣vsウルトラマン」ではなく、「心の闇を開き堕ちてしまった者」と「それを必死に救おうと足掻き戦う者」という純然たる「人間と人間の対峙」という形にハマるのも本作ならではの味わい・文学性があってまた良きよね 強いて言えばティガが最後ゼペリオン光線撃とうとした下りは入れんでも良かったかなと思うというのはある 「耐える」戦いにこそ見応えのある場面だから最後トドメ刺そうとしたみたいに見えたのがちょっと気になっちゃったので(今にして見ればイーヴィルティガ戦みたくセルチェンジビームとの併用をやろうとしたのかもとは思うが)

 

そしてラスト、息を引き取りながらも人間に戻ったリョウスケの亡骸に歩み寄ったホリイ隊員の、サナダリョウスケという「人間」の心に強く寄り添う慟哭混じりの言葉と共に物語は締めとなりました。前述したように今回の事件はエボリュウ細胞という因子が介在したからこそ大事にはなったけど、その発端はあくまでもリョウスケの心の奥底の闇、それを開いてしまった「人間」としての心の弱さが生んでしまったことであり、そんな彼の心の闇を誰しもが持ち得るものであるとしつつ、彼はその闇をふと開いてしまったにすぎなかったのだと、最後の最後まで彼の全てを「人間」として受け止めながら迎えた結末は辛いけど意味のあるものであったよな...と。このリョウスケの心の闇・弱さを1人の「人間」としての証と認め、受け止めて弔うからこそのサブタイの「闇へのレクイエム」なんだよなと 基本的に「光と闇」という対の要素を軸に置いてるティガだけど、精神的なところにおいてはこうして闇の存在を否定するばかりでなく「共に在るもの/向き合うべきもの」としてるのも特徴だと思う

というここのラストシーン、一番に目を惹き胸を打つのはやはりホリイ隊員のリョウスケに対する熱い感情の籠った言葉だよなぁと。浜辺でサヤカと一緒にリョウスケに向き合った時の声を震わせた必死な「もうええやん...!」の呼びかけといい、エボリュウとなって暴れるリョウスケに怒りとも哀しみともつかない「アホぉーっ!!」という叫びといい、今回のシリアスな場面におけるホリイ隊員のリョウスケとの対峙のシーンはどれも彼の熱い感情に溢れててグッとくるんですよね...その想いそのものは暴走するリョウスケに届かなかったけれど、この優しくも必死な想いを込めた言葉こそが、サナダリョウスケという「人間」が欲していた、彼を1人の「人間」として認め愛した存在の証明になってるのが沁みる

 

「誰にでも...心の闇はあるわなぁ

お前は、心の闇を開いてしまっただけの『人間』や

ゆっくり眠れよぉ!!

もう...誰とも競争せんでええんやぞぉ...!!

 

 

以上、ティガ第11話でした。1人の「人間」の心の闇にひたすら向き合った切なく哀しいながらも胸打つ人間ドラマが魅力ある実に濃いエピソードでありました。「人間」「光と闇」等のティガのテーマ性もさり気なく深めているのがグッとくる内容なのがとても良いんですよね  ホリイ隊員のキャラクター的な魅力が全体通して溢れているのも良い味わいだし、小さい頃よく観てたのもあって個人的にはティガ序盤の傑作群にも引けを取らないくらいに物凄くお気に入りの話ですね。改めて観てもとても面白かった

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた