AnDrew’s小生意気レビュー記

作品の感想レビュー記事をメインに投稿しています。作品への造詣を深め楽しみつつ、それを他の方々とも共有できる場になれば。よろしくお願いします。

ぼくとともだちの不思議冒険記

ウルトラマンブレーザー

第15話「朝と夜の間に」

感想レビュー

 

 

スパイラルバレード、とうとうクレーンゲームになっちゃったなァ!!どういうことだよ(

ザナディウム光線さながらの演出大喜利が一つのウリにはなってたもののレインボー光輪やチルソナイトソードに押されてあんまり使われないのでそこには正直惜しさを感じてたスパイラルバレードだったが、一発一発をデカくする方で魅せてくるとはな() でもザナディウム光線で色んな監督がバリバリじゃんじゃんやってたみたいに、決め手にしろとまでは言わずとももっと色々カッコいいのも面白いのもやって欲しいよ!2本のスパイラルバレードを交差させて十字架にしたやつで吸血鬼怪獣を倒すやつ見たいんです!!(勝手な願望)

 

実相寺昭雄監督の名作エピの一つ「恐怖の宇宙線」の怪獣ガヴァドンの50ウン年ぶりの登場を大きな見所として引っ提げてきた今回のエピソードは、ゲント隊長の息子・ジュンが繰り広げる不思議な出会いと冒険の物語。ハードSFテイストのブレーザーにおける今までのエピソードとは一味違った、子供達を物語の中心に置いた童話テイストの少し不思議なストーリーが目を惹く面白い話となっていましたね。ウルトラシリーズならではのエピソードの自由度の高さというところをブレーザーにおいてもグッと深めてきた一本であったなと

 

そんな今回のエピソードですが、大筋としては先にも述べたガヴァドン登場回の原典である初代ウルトラマン第15話「恐怖の宇宙線」の令和の世における“再演”とでも言うべき、フルパワーのオマージュに満ち溢れた内容になっていたのが非常に面白いポイントでありましたね。子供達を叱りに現れる雷おやじ(ちなみに今回の雷おやじを演じたのは特撮シリーズではおなじみ諏訪太朗さん。実家のような安心感)宵の空に星が輝いて「一番星みつけた」の歌が流れる演出ガヴァドンと戦うブレーザーに野次を飛ばす子供達全てが終わって土手で黄昏れる子供達のカット空にガヴァドンの星座が光りその目から涙の流れ星が落ちる様etc...と、ここモロに「恐怖の宇宙線」に被せてきてるな!!となる瞬間がめちゃくちゃたくさんあって、さながら問題の答え合わせみたいな小気味良さを味わいながら観られたのはなかなか楽しかった 放送前日に予習を兼ねて「恐怖の宇宙線」を観てたのもあって、すぐにアッ!!ってなる瞬間がむちゃ多かった  特に話の中でインタビューを受けてた野球道具持ったおじさんがなんと、当時「恐怖の宇宙線」の回に出ていたタカシという少年の役で実際に出演してた内野惣次郎さんだったというのは、後から知らされた時かなりびっくりしたオマージュ要素でありました。原典でも空き地に野球をしにやって来た少年達が土管に落書きをしてるムシバ少年を見つけたのがきっかけになってたので「なるほど、そこを踏襲して野球の要素を入れ込んだんだな、でもわざわざこれ見よがしに野球道具持ったおじさん出さなくても...w」と思ってたのですが、まさかおじさんそのものがそうだったとは...とここは一本取られました ほんとにオマージュ・リスペクトを全力でやってて良かった  個人的なところを言うと、せっかくなら新しい形のストーリーやって欲しかったな的な意味で今回の「恐怖の宇宙線」の再演には最初正直物足りなさもちょっとあった(直前に原典である「恐怖の宇宙線」を観てた分却って新鮮味が薄れたのはあるかもなので、観ずに臨むか後から原典観るかしてればもっと楽しかったかも)のですが、ここまで全力だったのが分かると気持ち良いね

タカハシヒョウリ/髙橋表裏 on X: "今日の『#ウルトラマンブレーザー』 ガヴァドンの第一発見者・内野タカシさん役の男性は、 57年前『恐怖の宇宙線』で少年の1人タカシくんを演じた内野惣次郎さんです。 内野さんは、今もガヴァドンのことをとても大事にしています。 そんな内野さんがガヴァドンに再会できたんだ。最高に粋な配役。 https://t.co/fHahYwohfO" / X

 

そして今回は先にも述べた通り、この「恐怖の宇宙線」の再演を軸に、ジュンくん達子供を話の中心に置いた童話的なテイストの「不思議で壮大でちょっと切ない、子供達の小さな冒険」みたいな話が織り成されていたのが大きな見所でありました。思いがけず繋がりの深まった友達と一緒に行く秘密基地増えていく仲間そこで成される不思議な出会いと交流大人達を巻き込んで大きくなっていく騒動最後に待つ切ないお別れ、とまさに良い意味で子供向けな、ファンタジージュブナイル小説とかアニメ映画って感じの展開や構図をこれでもかと詰め込んだ、友情と冒険の物語って感じのほっこりするストーリーだったのがとても面白かったなと。映画ドラえもんとかあの辺のテイストに近いのでなんか懐かしい気持ちになったよね  それでいて「ネットで拡散した」みたいな現代の子ならではな要素がスッと挿入されることで古臭くなりすぎない程良い補強があったのも上手い   またガヴァドンは絵から生まれたのだから食べるのも絵の食べ物」「消える時は絵になってぬるっと元の紙に戻っていく」みたいなガヴァドンの新解釈表現も、ガヴァドンのユニークさを押し出しつつ本作の童話的な雰囲気に凄くマッチしてて良かったポイント。絵の食べ物がガヴァドンにシュッと吸い込まれてくカットやガヴァドンが実写から絵にシームレスに移り変わって紙に戻ってく様子といった現代の技術だからこそできる表現が、ガヴァドンの纏う“実在感のある不思議な存在”的な雰囲気の説得力を良い感じに強めてたのが良い味付けだったね 昔はできなかった表現でそのキャラならではの個性をしっかり後押しする、という意味では凄く理想的だったんじゃないかなと

このストーリーを本作─リアル志向なSFテイストを一貫させてきたウルトラマンブレーザーという作品においてトンと入れてきたからこそのギャップも良さとして際立ったというか、最初にも述べたようにウルトラシリーズならではな横軸の広さ、話の自由さを本作においてもよりグッと深めた感じがあったのも良かったですね。インタビュー内で最初は凄く暗い話になるかもだったと田口監督が語っていたそうだけど、他の視聴者さんが言ってたようにそれだと却って他のエピソードの中で埋没してた可能性もあったよなとも思うので、今ではこういう形になって良かったなと思いますね  全く違う方向へぶっ飛んでみたりもしてこそのウルトラシリーズだぜ

アニメイトタイムズ公式 on X: "『#ウルトラマンブレーザー』メイン監督 #田口清隆 さんインタビュー ガヴァドンに託したシリーズへの愛――スター怪獣の"ゲスト感"を取り戻す手法とは? https://t.co/NnkRnS8Cj5 https://t.co/So0O1OUbwN" / X

シネマトゥデイ on X: "「#ウルトラマンブレーザー」 #田口清隆 監督のあふれる #ガヴァドン 愛「絶対に自分が撮る」58年ぶり再登場の裏側 @ultraman_series https://t.co/obafZi8w3h" / X

 

という感じで展開されたジュン達とガヴァドンの物語も、大人達からその存在を歓迎されなかったガヴァドンウルトラマンに空へと運ばれていくという切ない別れを経るという原典と同じ形で締め括られることとなりました。とはいえただただ同じだったというだけではなく、純粋な好奇心と大人達への抵抗から自分達がガヴァドンを半ば一方的に大きくしてしまったが故にガヴァドンを痛い目に遭わせてしまったことへのジュン達の後悔や、引っ越しで今いる地を離れる前に秘密の楽しみを共有できる友達が欲しくてジュンを誘ったアラタとその妹ツムギの心情との類比によるジュン達とガヴァドンの不思議な出会い・友情・別れの構図の強調、といった本エピソードならではな要素も随所に良い形で織り込まれており、ここがドラマ的にかなり良いポイントでありました。ジュン達の後悔は自分達を俯瞰し省みる“大人”な聡さを感じさせる一面でありつつも、ガヴァドンという友達との別れを強いられた恨み節を最後までウルトラマンに言い続けた原典のムシバ少年達のいじらしさと比べるとちょっと切ない成熟を感じる部分もあり、と原典と合わせた上だと子供の気持ちとしての解釈が分かれそうでキャラ描写的に面白い幅を感じられたしジュンとアラタ・ツムギの別れも、類比によるガヴァドンとの別れの切なさの強調でありつつ、この類比を示した上で別れの際にジュンの「手紙、書くよ」やアラタの「俺達やガヴァドンのこと、忘れないでくれよ」やツムギの「“またね”」をはじめとした前向きな言葉を入れたことで、「離れ離れになって寂しいけどずっと繋がってる」「築いた友情は嘘じゃないしこれからも消えない」という友達の間の微かな温かさをガヴァドンとの交流や友情も含める形で刻んでいて、原典とは違う後味が沁みたしと、ここは50ウン年越しのオマージュ作として送り出す上での真摯さを感じる発展のポイントになっててとてもグッときましたね。ガヴァドンが空から涙の流れ星を落とすという寂しさを感じさせるクライマックスは原典と同様だったけど、交わす言葉もなくお別れになった原典とは違い、同じ時間を過ごしたジュンとアラタ・ツムギが切れない友情をはっきり言葉にして確かめ合ったことで、ガヴァドンも離れ離れになったわけじゃなく「今も空から見守ってる」という形で遠いけど近くに感じられるようなオチになったのが、優しくて良かったなって...素晴らしいラストだった

 

 

以上、ブレーザー第15話でした。名エピ「恐怖の宇宙線」の直球オマージュをばんばん入れ込みつつ、時を経て描くからこその新たな魅力も随所に織り込んだ、実に素晴らしいリスペクトに満ちたエピソードであったなと。子供達が主役だからこそのあったかさや楽しさも本作に一つのアクセントを与えてくれたし、凄く面白い一本だったと思います。田口監督がずっと撮りたかったガヴァドンで気合い入れただけあったね 良かった

 

というわけで今回はこの辺で。最後まで読んでいただきありがとうございます。 読んでて共感できたり楽しめたりしたところがあれば幸いです

気に入っていただけたら次回も読んでいただけるとありがたいです。感想をくださったり記事の拡散等をしていただけたりすると更に喜ぶぞ!!

ではまた